政府は、新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない東京都と神奈川、埼玉、千葉3県を対象に、緊急事態宣言を7日にも発令する方針を固めた。菅義偉首相が4日の年頭記者会見で明らかにした。政府・与党では、東京都の小池百合子知事の責任転嫁ともみられる言動に対し、怒りや不信感が高まっている。

 「北海道や大阪など、時間短縮を行った地域では結果が出ている」

 菅首相は年頭会見で、感染リスクが高いとされる飲食店に厳しい営業時間の短縮を要請し、実際に新規感染者数を下降させてきた北海道と大阪府を、こう評価した。

 返す刀で、1都3県については、「三が日も感染者が減少せず、極めて高い水準だ」と述べ、不満げな表情を見せた。

 政府のコロナ対策分科会は昨年12月23日、都に対して営業時間を午後10時から前倒しするよう警鐘を鳴らす意見をまとめた。あくまで時短要請の権限は都道府県知事にあるためだ。

 だが、小池氏は翌24日、記者団に「さらに、厳しくし、どれくらいの方々が協力していただけるのか」と効果は限定的との見方を示し、厳しい対策に踏み込まなかった。

 そのためか、東京都では同月31日、新規感染者が1337人という過去最多を記録した。すると、小池氏は3県知事とともに1月2日、政府に対して早期に緊急事態宣言を再発令するよう要請する動きに出た。

 緊急事態宣言の発令は、日本経済に甚大なダメージを与えかねない。菅首相周辺は「小池氏の失政だ」と語るが、世論は「菅政権の対応が遅い」というムードだ。

 東京では今夏、都議選が予定される。国政では今秋までに、衆院解散・総選挙が行われる。政府・与党では、小池氏や一部野党、メディアの批判の背景に、こうした政治日程をにらんだ思惑を強く感じている。

 政治評論家の小林吉弥氏は「小池氏には『パフォーマンス優先』の面があるのは否定できない。だが、実際はギリギリの判断をしても感染に歯止めをかけられず、追い込まれている。次期衆院選での自らの国政復帰の可能性も意識し、『ここで失敗はできない』との焦りもあるようだ。こうした計算ずくの面も透けてみえるからこそ、菅政権の不信を買っているのだろう」と語っている。


1月5日 zakzak
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/210105/pol2101050006-n1.html