除雪中の事故で今冬に59人死亡 記録的大雪で急増 目立つ屋根からの転落
1/18(月) 16:51配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/4be2b1f3db6b0dc56a0105d8346c0f5b1380a0b7

 記録的な大雪が続く今冬、除雪作業中の事故で死亡する人が急増している。毎日新聞の集計(15日現在)では全国で59人。近年の1シーズンの死者数を既に超え、まれに見るハイペースだ。死者のうち65歳以上の高齢者が8割を占める。今後、本格的な雪の季節を迎えるため、国土交通省は除雪時の安全対策を徹底するよう呼び掛けている。

◇死者は北海道から広島の12道県で

 死者数は、国が豪雪地帯に指定する24道府県で2020年12月1日〜21年1月15日に起きた除雪作業中(作業中と推定される事例を含む)の事故について、警察発表や取材に基づき集計した。死者は12道県で出ており、道県別では新潟の13人が最も多く、次いで秋田の10人、北海道と山形の各9人と続く。福井(6人)と富山(1人)でも事故死が出ており、日本海側に被害が集中している。このほか青森、岩手、宮城、群馬、岐阜、広島の各県で各1〜3人が犠牲になった。

 死者59人は、記録的な少雪となった19年度(8人)の7倍超で、15年度(23人)▽16年度(45人)▽18年度(40人)――を既に上回る。平成以降で死者数が最多の113人に上った「平成18年豪雪」(05年度)のように、1シーズンの死者が100人を超える恐れもある。

 ◇除雪機使用中の事故も多発

 具体的な事故では、屋根の雪下ろし中に転落するケースが目立ち、毎日新聞の集計では少なくとも21人が該当する。新潟県長岡市では1月5日、無職男性(74)が自宅に併設した木造2階建ての作業所の屋根(高さ約7・2メートル)から転落し、頭を強く打って死亡した。警察によると、男性は除雪作業中だったがヘルメットや命綱はつけておらず、転落した場所は消雪パイプで雪がほとんど溶けていたという。

 除雪機を使用中の事故も発生し、6人が死亡した。秋田県由利本荘市では12月19日、無職男性(88)が自宅敷地内で家庭用除雪機の下敷きになって死亡しているのが見つかった。除雪機にひかれたり、体を巻き込まれたりして死亡する事故は後を絶たず、消費者庁も注意を促している。

 国交省によると、除雪中の死亡事故の類型としては他に、屋根からの落雪に巻き込まれたり、はしごから転落したりするケースがある。作業時の注意点として▽命綱や安全帯、ヘルメットの装着▽作業は2人以上で行うこと▽屋根からの落雪への警戒――などを挙げている。

 ◇除雪ボランティアも苦境に

 総務省消防庁によると、2019年5月までの10年間で除雪作業中に死亡した人のうち、約7割が高齢者だ。今冬も死者59人中49人が65歳以上で、同様の傾向にある。国土交通省は、豪雪地帯ほど人口減少や高齢化が進み、除雪の担い手が不足していることが背景にあると分析している。

 こうした中、期待されるのが除雪ボランティアだ。国交省によると、除雪ボランティアセンターを設置したことがある自治体は年々増えている。18年度は96に上り、約10年前の10倍になった。

 新潟県では、県内外から除雪ボランティアを募集する「スコップ」という取り組みがある。市町村からボランティアの要望があった場合、県が登録ボランティアに呼び掛け、高齢者の住宅周辺や道路の除雪を担ってもらう。今シーズンはまだ市町村からの要望はないが、新型コロナウイルスの感染拡大が懸念材料だ。登録ボランティア約2070人(20年11月現在)のうち6割は県外に住んでいるからだ。県の担当者は「受け入れは各市町村や社会福祉協議会の判断だが、感染が爆発的に広がれば受け入れ制限を考えざるを得ない」と話す。

 山形県尾花沢市は災害に備えた自治体間協定に基づき、宮城県内からほぼ毎冬、除雪ボランティアに来てもらっている。だが、今シーズンは新型コロナの感染状況を考慮して派遣を求めない方針で、市の担当者は「市職員や関係団体で雪かきをする。例年より人数が減るので、除雪に行ける場所が少なくなる可能性がある」としている。【池田真由香、猪森万里夏、山本佳孝】