新型コロナウイルス感染患者の受け入れ可能な数を示す「最大確保病床」数について、神奈川県が現在発表している1939床から大幅に減らす方向で見直すことが分かった。感染拡大で入院患者が増加していたが、この病床数を確保できず、実態を反映させることになった。県の見通しの甘さが露呈した形だ。(土屋晴康)
◆「第1波後にベッド数減った」
 最大確保病床の数は、感染拡大のピーク時に患者を収容できるベッド数。1939床は昨年4月の時点で、各医療機関が「確保可能」とした病床数を足した計画上のものだ。県内の入院者数は19日時点で961人。最大確保病床数を基にした病床使用率は5割未満となっており、県の実情を表していない。
 重症者用の最大確保病床も200床の確保は難しく、現在は117床だという。
 最大確保病床数の見直しについて、県の担当者は「第1波が収束後に、コロナ対応のベッド数を減らした病院もある。他の救急医療も守らなければならず、現実的な修正を加えることにした」と説明している。
◆スタッフ減、冬は他の病気も
 県病院協会の担当者は「春先は新卒の医師、看護師の加入もあり、医療スタッフが最も多い。その後スタッフがやめたり、冬場には心筋梗塞や脳卒中などの救急患者が多くなったりし、受け入れ可能な病床は少なくなっている」と明かす。
 現在、コロナ患者がすぐに入院できる「即応病床」数は1078床。県は各医療機関への聞き取りを基に、新たな最大確保病床数を公表する。
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◆病床増やしても「すぐ不足する」
 神奈川県で病床が不足する中、東海大医学部付属病院(同県伊勢原市)は、コロナ患者の専用病棟を設け、重症者用を2床、中等症用を5床増やした。それでも、同病院の高度救命救急センター所長で、コロナ対策を担う守田誠司医師(46)は「今の感染拡大が続けば、すぐに不足する」と危機感を訴える。
 20床の重症者用病床はほぼ埋まり、中等症用病床は用意した10床を超えて受け入れざるを得ない状態が続いていた。
 手術を終えた患者が術後療養のために入る病棟を空け、コロナ患者の病床をまとめ、さらに病床を増設した。医師や看護師らの移動や防護服の着替えなどの負担軽減にも配慮した。
 以前は横浜市や川崎市から搬送されるコロナ患者が多数を占めたが、最近は同病院のある県中西部でも患者が増えている。
◆ゴール見えない闘い
 自宅やホテル療養中の患者が、容体の急変で搬送されてくるケースも目立つ。緊急性のない手術を先送りして対応しているが、守田医師は「大学病院に不要不急の患者は少なく、医療スタッフをやりくりしているが、今がぎりぎり」と強調する。
 今月、院内で初めての感染者として、看護師や患者計14人の陽性が確認された。入院前の検査では陰性で、その後に発症した患者から広がったようだ。「職員は食事もバラバラに食べるなど、感染対策に万全を期していたが防ぎきれなかった」と残念がる。
 医師や看護師らの疲労も増している。「ゴールが決まっていれば、モチベーションは保てるが、ゴールが見えない。皆、『自分の代わりはいない』という使命感で動いている」

東京新聞 2021年01月21日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/81063