※産経新聞

 電通グループが本社ビル売却の検討を発表するなど、都心のオフィスを売却・縮小する動きが大企業で広がっている。丸紅は5月にも移転する新本社で社員用の座席数を3割減らす。新型コロナウイルスの感染拡大で社員のテレワークが定着し、都心に大型のオフィスを構えている必要性が薄れてきているためだが、こうした不動産を割安と見た外資が買い取ったとみられる事例も出ている。

 電通グループは、東京・港区の本社ビルを売却する。売却額は国内のビル取引としては過去最大級の3000億円規模になる見通し。新型コロナの影響で広告収入は低迷、本社ビルに勤務する約9000人の出社率は最近では2割程度にとどまり、余剰スペースが生じていることから、売却で資産の効率化を図る。

 不動産サービス大手のジョーンズ・ラング・ラサール(JLL)によると、これまでのビル取引の国内最高額は、平成18年に不動産ファンドが香港企業から取得したJR東京駅近くのオフィスビル「パシフィックセンチュリープレイス丸の内」の約2000億円という。

 電通の本社ビルが立地する汐留のような一等地にある大規模なオフィスビルは従来、“旧財閥系”を中心とした日本の大手資本が独占し、海外資本に売却されることはほぼなかった。海外投資家には、コロナ禍で「千載一遇の取得機会」と捉える向きもあるようだ。

 本社ビル売却では昨年12月、音楽・映像事業を手がけるエイベックスが、入居する東京・南青山の「エイベックスビル」の売却を発表した。売却先はカナダの不動産ファンドとみられる。またアパレル大手の三陽商会も昨年、東京・銀座の旗艦店ビルを売却した。

 不動産関係者は、コロナ禍を受けた金融緩和でだぶついた資金が、低迷する世界の不動産市場の中でも収益性を維持する日本市場に向かっていると指摘。基金を通じた投資などで実情は不明だが「中国投機筋の資金も過熱投資を招いている」(関係者)と指摘する声もある。

 今後も都心のオフィス需給は緩むと見込まれる。総合商社の丸紅は、来年度移転する新社屋の社員用の座席数を、現在の7割程度まで減らす。当初は4000人分と想定していたが、新型コロナ感染拡大で取り入れた在宅勤務などのテレワークの定着などを前提に座席数を2800程度と想定。柿木真澄社長は「働く場所にこだわらない態勢に切り替える」と語る。

 オフィス仲介大手の三鬼商事によると、昨年末時点で、東京の都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)のオフィス空室は前年同月の3倍に拡大。オフィス面積の削減が進む。

■国内外で既存ビルの改修も

 コロナ禍は、不動産投資のありようも変容させている。経済活動の低迷に終止符を打つ感染終息が見通せない中、大規模投資の決断はしにくい。一方、巣ごもり需要やテレワークの拡大で老朽化した施設のIT化は待ったなしだ。大手ゼネコンは、こうした内外の需要変化の取り込みを商機にする構えだ。

 ゼネコン大手の大成建設は、建築物の改装・改修を行うリニューアル事業を担当する部署を新設した。相川善郎社長は産経新聞とのインタビューで、都心では経年劣化した建築物を取り壊して新築するのは、所有者の費用負担や周辺環境への影響が大きく「難しい」と指摘。耐震補強や増築に加え、通信環境などIT化工事で、完成から数十年たった建築物の資産価値向上を図る、と語った。令和2年11月に本部を新設し、全国の10支店にリニューアル室を設置した。

 国土交通省によると、令和2年度の建築投資は官民合わせて38兆1500億円となる見通し。そのうち既存のビルや工場などの建築補修(改装・改修)投資は7兆7000億円(前年度比4・3%減)となる見込みで、建築投資全体の2割に及ぶ。

全文はソース元で
https://news.yahoo.co.jp/articles/c27d81e0f5773343f439e07bc196a638e861e986
https://amd-pctr.c.yimg.jp/r/iwiz-amd/20210124-00000510-san-000-1-view.jpg