※西日本新聞

 全国で一時停止中の観光支援事業「Go To トラベル」を巡り、政府は地域を限定した形での事業再開を検討している。新型コロナウイルスの感染が落ち着いている地方の知事や観光業界からは早期再開を望む声が相次いでいる。ただ感染状況は地域によって異なるため、世論の一部には感染拡大への警戒感もあり、政府は再開時期や対象地域などについて慎重に判断する方針だ。

 「全面再開は難しくても、感染状況が好転している『ステージ2』(感染漸増)同士の県は再開するなど弾力的に考えてもらいたい」。全国知事会長の飯泉嘉門徳島県知事は9日、西村康稔経済再生担当相との会談後、記者団にこう述べた。

 西村氏は1月末、再開には感染状況を示す指標が宣言の解除目安の「ステージ3」(感染急増)より厳しい「ステージ2」になることが必要との認識を示していた。事業は2020年12月28日から全国で停止し、3月7日まで継続される。

 だが、新規感染者数の下降傾向に加え、地域経済の疲弊に危機感を抱く地方の声に押される形で、政府、与党内からは積極的な意見が相次ぐ。

 赤羽一嘉国土交通相は8日の衆院予算委員会で「宣言解除後、速やかに再開してと、どこに行っても要望される。地域限定など来るべき時にスムーズに再開できるようにしたい」と述べた。自民党の二階俊博幹事長も9日の記者会見で「知事が求めている地域は優先してやるのも一つの方法だ」と後押しした。

 政府はGoTo事業について、経済を下支えしてきたという自負がある。利用者は20年7〜12月に延べ8300万人。菅義偉首相は「ホテル、旅館の稼働率は(1割台から)7割にまで回復した。経済効果5兆円、雇用効果は46万人」と胸を張る。

 ただGoToを巡っては、事業開始後、旅行関連のコロナ感染者が最大6〜7倍に増えたという西浦博京都大教授らの分析結果もある。野党からは「事業をやめるべきだ」との批判もあったが、再開に備えた延長費1兆円超を盛り込んだ20年度第3次補正予算は成立。自民幹部は「確実に国民受けする政策で、経済も政権も浮上させる『肝』を使わない手はない」と強気だ。

 だが、首相には苦い記憶が刻まれている。全国一時停止のタイミングが遅れたとして集中砲火を浴び、内閣支持率低迷を招いた。首相周辺は「一つでも宣言自治体が残っていれば部分再開は難しいかもしれない」と明かす。 (郷達也)

2/10(水) 11:51配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/685c8c20052cc4283f16f295f4df42e752a205b5