ネット市民は最近、「?多多(ピンドゥオドゥオ)」も標的にしている。?多多は、アント・グループを傘下に持つアリババ集団と競合するネット通販大手だ。?多多で働く23歳の女性従業員が残業の後、帰宅途上で倒れ、その後病院で亡くなったという出来事が1月4日に報じられたのだ。

 これを受けて、中国全土で議論が巻き起こった。主たるテーマは中国の働き過ぎ文化。ただし、この出来事はもっと根本的な問題の表れだと指摘する者もいた。「資本主義的?多多」を問題にしたある投稿動画のナレーションは「スピードに取りつかれた中国のテック分野では、労働法はテーブルクロスやトイレットペーパーと同じで、決して尊重されることがない」と訴える。この動画は50万回以上再生された。

 別の動画では黒いパーカを着た若者が、?多多のアプリで物を買うのはやめようと消費者に呼びかける。「資本家は俺たちを搾取するだけだ。俺たちを人間と見ていない」

 中国政府が大切にする通信機器大手ファーウェイ(華為技術)でさえ批判を免れない。非難の矛先は特に、同社の創業者である任正非氏の末娘、アナベル・ヤオ(姚安娜)氏に向いている。同氏は1月14日、自身についての17分間のドキュメンタリー動画を公開し、念願の芸能人デビューを発表した。これが物笑いの種となった。

 中国のSNS(交流サイト)「微博(ウェイボー)」上の同氏のアカウントに書き込まれたコメントの中で最も多く「いいね」を集めたのは次のものだった。「私たちの物質的生活を支配するだけでは物足りないのですね。資本家は私たちの文化的生活も支配したいのですね」。ヤオ氏は自力でやってきたと主張するが、それを嘲笑するショート動画が山のように作られた。

 これらの動画は特定の富裕層をあざ笑うだけにとどまらない。ある作品は、酪農家が牛乳の価格を高く保つために、余った牛乳を貧しい人々に分け与えることなく廃棄していると説明して資本主義のあり方を批判する。

 別の動画では、帽子を後ろ前にかぶった若者が、毛沢東が1972年に発した「中国が資本主義を取り入れれば、国際企業による支配を許し、この国を半ば植民地化する」という言葉を称賛する。若者は「この偉大な人物が示した先見の明は時代を超えて生き続けてきた」と親指を立てながら語る。

 多くの動画には、革命を思わせるような激しさはない。社会主義の労働歌「インターナショナル」を演奏する動画が多くのクリックを集めているが、決起への呼びかけではない。むしろ、懐古趣味的な受け狙いか、風変わりな投稿ネタに見える。このような動画に引き寄せられる若者たちは、毛沢東時代の紅衛兵とはまるで異なる。紅衛兵は「資本主義の道を歩む者(走資派)」と見なす人々に激しい暴力を振るった。

「996」で生まれる新たな階級

 それでも、現代の若者がビジネスエリートに向ける怒りは本物だと思われる。そのことが大ざっぱながら見て取れるのが、もう一つの人気動画アプリ「?哩?哩(ビリビリ)」の動画上にかぶせて表示されるコメントの嵐だ。

 馬氏が登場する動画にはかつて、尊敬か、もしくは冷やかしのコメントが集まっていた。ビジネスにおける同氏の洞察力を称える者もいれば、皮肉を込めてカネをくれと言う者もいた。だが最近では重いコメントが増えた。「ジャック・マーを辞めさせろ」「世界の労働者よ、団結せよ」といった調子だ。

 この怒りがどこから来たのかを説明するのはたやすい。

全文は:https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/world/00327/?P=2&;mds