「きょうのランチはイタリアンね」と誘われたら、多くの人はパスタやピザを思い浮かべるだろうか。だが、新潟では話は別だ。
新潟の「イタリアン」は、ソース焼きそばの上にトマトソースをかけた、「洋風焼きそば」のような料理を指す。県内のファストフード店「みかづき」（新潟市江南区）と「フレンド」（長岡市）の両社が販売。新潟のご当地グルメとして、多くの県民に絶大な人気を誇っている。

　その歴史は約６０年前にさかのぼる。新潟随一の繁華街・古町にあった「みかづき」の前身の甘味喫茶で、初めてイタリアンが提供されたのは１９６０年のことだ。その前年、新メニューを考えていた三日月晴三会長（故人）は神奈川・箱根での勉強会に参加。東京・京橋で甘味喫茶を営んでいた河合正吉さん（故人）と出会い、新しく始めたという鉄板焼きの店へ招かれた。

　そこで目にしたのが大阪の焼きそばをアレンジしたソース焼きそば。三日月さんはそこからヒントを得て、「ただの焼きそばではつまらない」と、スパゲティのようにトマトソースをかけフォークで食べるスタイルを考案。イメージから「イタリアン」と命名した。

　最初は売り上げが低迷したというが、市内の学校のバザーや文化祭に出店で売り出したことがきっかけで、県民に広く知られるようになった。次第に口コミで評判が広まり、店の売り上げの中心を占めるようになった。

　一方、みかづきに少し遅れてイタリアンを始めたのがフレンドの前身の甘味処（どころ）「長岡饅頭本舗」だ。その経営者だった木村政雄さん（故人）は、同じ商業セミナーで学ぶなど三日月さんと親交があり、商圏が新潟と長岡で離れ、競合しないことから、フレンドでも販売されるようになった。

　双方のイタリアンは微妙に違う。みかづきはトマトの酸味が前面に出たソースをかけた四角い太めんをフォークで食べる。これに対し、フレンドはひき肉入りミートソースにやや細い丸めんで、はしを添えて提供する。フレンドでは、同社こだわりのギョーザと一緒に食べるのが定番で、はしを使うのもその名残だという。付け合わせもみかづきが白ショウガ、フレンドは紅ショウガと違う。

　両社ともに地元に根づいているだけに、愛好家による「新潟ＶＳ長岡」という郷土愛論争の種にもなりやすい。現在、みかづきは下越地方を中心に２２店舗、フレンドは中越地方を中心に９店舗を展開する。

　みかづきの小林厚志営業部長（６６）は「今後も両社で新潟のイタリアンを盛り上げていけたらうれしい」、フレンドの豊田雅彦社長（４７）も「（みかづきは）ライバルであり盟友。今後もお互いに頑張っていきたい」と話す。【露木陽介】

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　◇カレーイタリアンも人気

　実はトマトソースだけがイタリアンではない。カレーがかかったカレーイタリアンは、両社ともに看板メニューの一つだ。みかづきではエビチリイタリアン、フレンドではオムレツイタリアンなどの変わり種もある。

https://news.yahoo.co.jp/articles/59d452a2b1dda542fc8881f7e6ccc6e2a6a9a8b
2/18(木) 12:35配信


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