東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の橋本聖子会長は18日、東京都内で記者会見し、開閉会式で演出の総合統括を務めるクリエーティブディレクターの佐々木宏氏(66)が辞任したと発表した。人気タレントの渡辺直美さん(33)の容姿を侮辱するような演出プランを提案したと週刊文春が報じていた。橋本会長は会見で「発言は不適切であり、大変遺憾。このようなことはあってはならない」と謝罪した。組織委は後任選考を早急に進める。

 佐々木氏は昨年3月、無料通信アプリ「LINE(ライン)」を用いて演出関係者のグループで話し合う機会があり、渡辺さんの演出として動物のキャラクターを提案。メンバーからの批判を受けて謝罪、撤回した。週刊文春電子版の報道を受けて佐々木氏は18日未明「大変な侮辱となる私の発案、発言で取り返しのつかないこと。心から反省し、おわび申し上げる」などと記した謝罪文を公表し、辞意を示していた。

 橋本会長は「大会まで4カ月と迫り、佐々木氏の存在は式典を成功させるためには極めて重要であり、これまでの貢献は大きかった。しかし、ジェンダー(男女)平等推進を重要施策として掲げている以上、辞意を受け入れることとした」と説明した。新型コロナウイルスの感染拡大による延期に伴う大会の簡素化により、組織委は昨年12月、7人で構成する演出チームを佐々木氏に一本化した。準備の遅れが懸念されるが、今後は佐々木氏の計画を維持しながら準備を進める考えを示した。

「個性や考え方、認め合える世界に」

 一方、渡辺さんは所属する吉本興業を通じて「体が大きいと言われることは事実で、見た目をやゆされることも重々理解した上でお仕事をさせていただいている。それぞれの個性や考え方を尊重し、認め合える楽しく豊かな世界になれることを心より願っている」とコメントした。

 組織委を巡っては2月、森喜朗前会長が女性蔑視発言で引責辞任したばかり。信頼回復に努めていたところで多様性を否定する新たな発言が発覚し、大会関係者からも非難する声が相次いだ。東京都の小池百合子知事は「一言で言って、大変恥ずかしい。コロナで世界が変わっている中で東京から、日本から何を発信するかがポイント。ネガティブな発信をしてどうするんだと思う」と不快感を示した。女性活躍担当相を兼ねる丸川珠代五輪担当相も参院予算委員会で質問に対し「全く不適切なものであり、あってはならない発言」と指摘した。【浅妻博之、斎川瞳】

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