──ミシガン大学医学大学院の研究チームが、インフルエンザワクチンの接種と新型コロナウイルス感染症との関連を調べた......

2019/2020年シーズンのインフルエンザワクチン接種者は、非接種者に比べて、新型コロナウイルス感染症の検査で陽性になりにくく、重症化しづらかったことがわかった。

米ミシガン保健福祉省(MDHHS)では、2020年3月10日から7月15日までに2万7201名が新型コロナウイルス感染症の検査を受け、4.5%に相当する1218名が陽性と診断された。陽性者のうち41.5%の505名が入院し、7.4%にあたる90名が死亡している。

■ 入院が必要となる確率が低く、入院期間も短かった

ミシガン大学医学大学院の研究チームは、これらの陽性者を対象に、インフルエンザワクチンの接種と新型コロナウイルス感染症との関連を調べた。なお、インフルエンザワクチン接種者は全体の47.8%にあたる1万2997名で、非接種者は1万4204名であった。

米国の医学雑誌「アメリカン・ジャーナル・オブ・インフェクション・コントロール(AJIC)」で2021年2月22日に発表された研究論文によると、インフルエンザワクチン接種者のうち新型コロナウイルス感染症の検査で陽性と診断されたのは4.0%にあたる525名であった一方、非接種者では4.9%にあたる693名であった。

新型コロナウイルス感染症の検査で陽性となる確率は、非接種者に比べ、インフルエンザワクチン接種者で24%減少している。年齢、性別、人種、BMI、基礎疾患、喫煙状況などを考慮しても、インフルエンザワクチンの接種と新型コロナウイルス感染症との関連が認められた。

また、インフルエンザワクチン接種者は、入院が必要となる確率が非接種者よりも低く、入院期間も短かった。ただし、死亡率では両群に有意な差は認められなかった。

■ 「免疫系に直接、生物学的効果をもたらしている可能性がある」

インフルエンザワクチンの接種と新型コロナウイルス感染症との関連についてのメカニズムはまだ解明されていない。

研究論文の責任著者でミシガン大学医学大学院のマリオン・ホフマン・ボーマン臨床准教授は、「インフルエンザワクチン接種者は、ソーシャルディスタンスの確保など、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のガイドラインを遵守しているのかもしれない」と指摘する一方で、「インフルエンザワクチンが、新型コロナウイルスに対抗する免疫系に直接、生物学的効果をもたらしている可能性がある」との見解も示している。

ブラジルでも、同様の研究結果が明らかとなっている。スイス・バーゼル大学やブラジル・サンパウロ大学らの研究チームは、ブラジルの新型コロナウイルス感染症の陽性者5万3752名を対象に分析し、2020年12月11日、「インフルエンザワクチン接種者は、新型コロナウイルス感染症により集中治療室での治療が必要となる確率が平均7%下がり、死に至る確率が16%下がった」との研究論文を発表している。


3/26(金) 20:59配信 ニューズウィーク日本版
https://news.yahoo.co.jp/articles/f676dfee86f2f2b2039717be7588a5dd5032e9f4