世界経済フォーラムが2021年度の「グローバル・ジェンダーギャップ・リポート」を発表した。
日本は156ヵ国中120位で、2020年の121位より1位上昇したが、G7の中で最下位だ。

では、人権問題はもちろんのこととしても、ジェンダー不平等を改善することでどんな良いことがあるのだろうか。
その具体例ともいえるのが、コーヒー園で実現させたジェンダー平等の取り組みだ。
これにより品質向上をはじめ、多くの人にとって劇的な効果が表れたという。

(中略)
■コーヒー農園で働いても経営に関われない女性たち

 そもそも、コーヒー生産農家の仕事には、コーヒー樹の栽培から収穫、精選、出荷、販売など、多くのプロセスがあり、女性はその多くにおいて重要な役割を担ってきました。
それにもかかわらず、女性がコーヒー農園で働いていても、男性と同じように経営に関わったり、組合に入り融資や技術支援を受けることが難しい地域はまだまだたくさんあります。

そのようなジェンダーの不平等は、女性が土地の所有権を持つことが慣習的に困難である国や地域においてはさらに顕著です。
多くの国で伝統的に重んじられてきた家庭の中での女性の役割が、家事も子育ても一手に引き受けるマルチタスクであるため、
男性に比べて女性は学校からも遠ざけられ、女性の貢献は正しく認識されてきませんでした。

コーヒー農家の女性も、農園での労働、家庭内での労働と、多分野の労働を担っているにもかかわらず、その貢献が社会的に認められない例が多々あります。
それは、世界が抱える大きな課題であり、その流れを変えようという動きは世界中のあちこちで、そしてコーヒーの生産地でも生まれています。

(中略)
 ウガンダの生産者グループを対象に行われたある調査では、コーヒーは男性が所有権を持つ土地で穫れる作物なので、
「男性の作物」だという考えが根強いことが、女性、男性の双方へのインタビューからわかっています。
女性や子どもたちは、コーヒー農園で働いても、コーヒーの販売に関わらないため、自分たちのコーヒーの販売価格を知らないケースさえあったと言います。

 女性を支える社会基盤の脆弱さは、女性の進出を妨げる直接的な要因になっていますが、仮にそのような点が改善されたとしても、
社会での女性の役割についての固定観念が強いと、女性は無意識のうちに諦めてしまうこともあります。
これは、途上国の女性に限った問題ではなく、日本で女性の管理職や、政界での活躍が極めて少ないのは、ジェンダーの平等が根本的に社会に浸透していないからとも言われます。

(中略)
■家庭内での女性の地位が向上

 そこでFNCは、より健全な家族経営によるコーヒー生産を普及させるために、このプログラムを開始し、
家庭内での女性の地位向上と、女性への品質管理指導や女性がマーケティングに関わるための支援を行いました。
女性が販売に関わりを持つようになったことで、コーヒーの品質は格段に向上しました。
品質が良ければ高く売れることがわかると、より収入を得るために完熟豆を選んで収穫し、誰もが丁寧な精選をするようになりました。
その結果、このプログラムのコーヒーは高い評価を受けるようになりました。

 また、プログラムに参加する女性たちの強い団結力で情報交換が密になったことや、女性は利益のほぼすべてを進んで設備や将来に投資したこともプログラムの成功を後押ししたのです。
さらに女性は、自らの収入を家族のために使うことが多いため、世帯全体の生活の質が上がったとの報告も出ています。
また女性がコーヒービジネスに積極的に参加することで、子どもたちや若年層がコーヒー生産に興味を持つようになり、後継者育成にも大きく貢献しているとも言われています。

(中略)
また、グループに参加する前と後の家庭での自分の役割を比べてもらったところ、
「以前は、農園で働いていても、コーヒーに興味がなかったが、トレーニングを受けて、いろいろな視点で世界を見られるようになった」
「以前は、自分はただの主婦だと思い込んでいたが、今ではコーヒー生産が家族経営に変わり、自分も関わっていると言える」 などの声が多数あがり、
女性たちの意識が大きく目覚めたことがうかがえました。

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https://news.yahoo.co.jp/articles/5880f026b10302621efb0b9c4f1e709b2e5bc14e?page=4