【「王朝交替」という幻想】

女系天皇を巡っては、ヨーロッパの王家の例を手本として、「王朝交替(こうたい)」に繋がるのではないか、という懸念が一部にあるようだ。

しかし、男系天皇であれ女系天皇であれ、天皇(又は皇族)のお子様、つまり「皇統に属する子孫」による皇位の「世襲」継承である以上、王朝交替という話にはならない。

ヨーロッパの王家を一先ず基準に見立てても、そのように決め付ける訳にはいかない。

例えばオランダのオラニエ=ナッサウ家の場合。
第4代・ウィルヘルミナ以来、第5代・ユリアナ、第6代・ベアトリクスと女王が続いている。
現在は、ベアトリクス女王とドイツ人外交官だった王配クラウス・フォン・アムスベルクとの間に生まれた、ウィレム=アレクサンダー国王が即位されてている。
この間、女系継承が続いていても、勿論、王朝の交替は起こっていない。

その一方で、フランス王家では、カペー朝のフィリップ3世の孫のフィリップ6世が即位してヴァロワ朝へと交替している。
これはフィリップ6世が、王位に即(つ)いていないシャルル・ド・ヴァロワ(=国王フィリップ4世の弟)の子で、傍系継承だった為。

更に、カペー朝のルイ9世の男系10世の子孫だった、アンリ4世の即位によってブルボン朝に交替。
これらは、いわゆる「男系」の血筋は繋がっていても、傍系継承による血縁の遠さなどから、王朝交替と見なされた例だ。

“仮に”これを基準にすると、旧宮家系の人物が即位すれば、そのまま「王朝交替」という話になってしまいかねない。
以前、ある雑誌の企画で座談会があった時のことを思い出す。
京都大学のS准教授から質問を受けた。

「旧宮家の人々というのは天皇からの男系の血縁はどのくらい離れているんですか?」と。
「皇籍取得の対象になる皆さんは全て20世以上離れていますよ」と答えたら、随分驚かれた。・

「20世以上ですか! もしそんな人が即位したら、まさに王朝交替ですね」。

実際に即位の可能性が考えられるのは、もっと血縁が離れた世代になろう。
国民の一般的な感覚でも、これまでの直系の血筋を引く天皇(又は皇族)のお子様が即位される場合とは異なり、“全く違う”皇室(?)が始まると受け止められるだろう。