効果と副反応を冷静に比較考量すべき

2021年4月5日時点で、人口100万人当たりの新型コロナウイルスの累積感染者数はアメリカの9.3万人に対して日本は0.4万人、人口100万人当たりの累積死亡者数はアメリカの1679人に対し、日本は73人である。累積感染者数、累積死亡者数ともにアメリカの約4%にすぎない。話を単純化するために、ワクチンの有効性と副反応を死亡率に限定して考えると、有効性が90%の場合、ワクチンによって救われる命はアメリカの1511人(1679×0.9)に対して、日本は66人(73×0.9)となる。(※スマホではグラフを画面を横にして見てください)

一方、ワクチンには一定の副反応がある。ワクチン接種に意味があるのは、ワクチンによって命が救われる人がワクチンの副反応によって亡くなる人よりも多い場合である。ワクチンの効果は、アメリカの場合、副反応による死者が100万人当たり1511人未満であれば、ネットでプラスである。だが、日本では副反応による死者が100万人当たり66人未満でなければ、ネットでプラスとならない。つまり、アメリカは新型コロナによる死者数が多いので、副反応に対する許容度が高いが、もともとの死者数が少ない日本では副反応に対する許容度は低くなる。

また、ワクチンの効果が非常に高かった場合、感染者数の水準が大きく下がることはありうるが、ゼロになることは考えにくい。気温の変化や変異株の出現による増減は繰り返すだろう。日々の感染者数、死者数の動きに一喜一憂する状況を変えない限り、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などを通じた自粛要請と解除も繰り返され、対面型サービスの低迷は長期化する。

ワクチンの効果が小さいのは、前述のように新型コロナウイルスによる被害が小さいからなので、悲観的に捉える話ではない。日本では新型コロナウイルスの流行前は、インフルエンザで毎年1000万人以上の感染者(推計受診者)が発生していたが、新型コロナウイルスの感染者数(陽性者数)は1年以上が経過して約50万人にすぎない。

死者数はインフルエンザの約3000人に対して、新型コロナウイルスは約9000人と多い。だが、これは2020年6月18日に厚生労働省から出された事務連絡 において、速やかな報告のために新型コロナウイルス感染症の検査陽性者が入院中や療養中に亡くなった場合、厳密な死因を問わずコロナによる死に計上するようになったため、過剰計上の可能性がある。従来であれば肺炎や癌による死と報告されていた事例が含まれるのである。

2020年は高齢化の中でも日本全体の死者数が減少

新型コロナウイルス感染症は感染者、死者の計上方法が従来と異なるため、その深刻度を把握しにくい。従来と同じ基準で考えるためには、新型コロナウイルスの感染拡大によって全体の死者数が増えたかどうかを見る必要がある。

日本は高齢化の進展を背景に、総死亡者数は2010年から2019年まで10年連続で増加していた。この間の増加幅は年平均2.4万人、2019年の総死亡者数は138.1万人であった。しかし、新型コロナウイルス感染症が流行した2020年は、多くの国で超過死亡が発生する中、日本の総死亡者数は前年より9373人減って11年ぶりの減少となった。

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