東京オリンピック(五輪)の開幕まで3カ月を切ったが、国民の間でその実感はあるだろうか。
新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない状況に、25日、3度目の緊急事態宣言が発令された。
「実感はない」と答える人の方が多いのだと思う。
大会運営の中枢、組織委員会を担当している私ですら、その実感が湧いてこない。

この感覚は一般人だけなのか−。
卓球担当としてその疑問を東京五輪代表選手に聞いてみた。
08年北京五輪から4大会連続代表で、16年リオデジャネイロ五輪では日本卓球界で初となる
シングルスのメダル(銅)を獲得した水谷隼(31=木下グループ)は「実感はないですね」と率直に言った。

「時期によって、2週間おきぐらいに大会が『やれそうだな』とか『どうなるんだろう』と、
行ったり来たりしている感じ」と本音を明かした。

4月は競泳日本選手権で白血病から復活した池江璃花子が東京五輪代表権をつかんだり、
ゴルフの松山英樹がアジア人で初めてマスターズを制覇したりと五輪ムードが高まった。
一方で、自民党の二階俊博幹事長が中止の可能性に言及したり、
コロナの再拡大で緊急事態宣言が発令されたりと、開催への不安要素も露呈した月だった。

12年ロンドン五輪から3大会連続の代表となる丹羽孝希(26=スヴェンソン)も
「本当に五輪があるのか実感が湧かない」と答えた。「開催するかしないかをはっきりしてほしい」とも。
国際オリンピック委員会(IOC)や政府、東京都、組織委も「開催する」と表明しているが、それが伝わってこないという。
選手にとって当局の発表よりも、国民世論の声の方が影響が大きいと感じた。

直前期にもかかわらず開催動向に心が揺れ動く、精神面で苦しい状況。
それでも五輪で完璧なパフォーマンスを出せるよう、しっかりと準備している。
国民の意見に耳を傾けながら。
https://news.yahoo.co.jp/articles/fa32c90cb5a03602d9683bbcbafbdd9b15ac26fa