アダルトビデオ(AV)の購入履歴をネットに流され、一時は自殺を考えた石渡貴洋さん(27)。彼を追い詰めたのは、サイバー空間の悪質な集団「恒心教」(こうしんきょう)だった。

恒心教は個人情報を晒すほか、日常的に施設への爆破予告をおこなうなど「犯罪行為」にも手を染めている。逮捕者を出しても活動がおさまる気配はない。石渡さんの被害事実などから、「ネットの闇」そのものと言える恒心教の実態を報告する。

●爆破予告を繰り返す「恒心教」

今年3月上旬、恒心教と称する一人、大学院生の男性(当時23歳)が、強要の疑いで書類送検されたと複数のメディアが伝えた。報道によると、男性は昨年7月、高校生を脅して、「ネット上の掲示板に書き込まれた爆破予告を見た」と関係各所に通報させようとした疑いがある。

実はこの男性は昨年11月にも、警視庁に逮捕されたことがニュースになっている。このときは、ネット上の掲示板に高知県内の大学を爆破すると書き込み、授業を休講させたなどとする威力業務妨害の疑いだった。

「爆破予告」が出されれば、高知の大学のように休講措置を取る場合もあるし、店舗ならば一時休業の対応をせざるを得ないかもしれない。少しの良心があれば、自分が発する予告が多くの人に迷惑をかけるとわかる。

しかし、恒心教には、そうした良心は欠けているようだ。

自分の名前が使われて、大学や施設など数多くの施設への爆破予告を出された石渡さんは話す。

「彼らは、予告が広まって、現実に被害が出ることをむしろ楽しんでいます。仲間から逮捕者が出ても変わっていません。捕まらないように混乱を起こすことが愉快でたまらない。報道が出ても、単に『捕まる奴はやり方が馬鹿』だとの結論で済ませている」

●唐澤貴洋弁護士をターゲットとした集団

こんな活動をしている恒心教とは何者なのか。恒心教には宗教の「教」の字が使われているが、特段、新興宗教などのたぐいではなく、あくまでネット上のつながりだ。そのため教えを伝える教祖もいない。

ネットで個人攻撃をし、学校や公共団体などを相手に爆破予告などを繰り広げてきた。

ただし、彼らが一方的に「尊師」の名称をかぶせている弁護士がいる。『炎上弁護士』などの著者があり、NHK番組「逆転人生」でも取り上げられた唐澤貴洋氏だ。

かつて唐澤氏がネット炎上した相談者の支援に乗り出したところ、ネット民の一部が逆に唐澤氏を攻撃対象にし始めた。2010年代の初めごろだ。「恒心」の文字も、当時、唐澤氏が開いていた法律事務所名から取られている。

それから10年ほど経つが、彼らは唐澤氏の動向を細かくチェックし、ネットで更新することを続けている。さらに唐澤氏だけに飽き足らず、何か絡めるネタを与えた人物を炎上対象にしている。昨年は、ある男性YouTuberを標的にした。

石渡さんは、いまだ唐澤氏と直接、面会やメールなどでやり取りをしたことはない。しかし、2019年秋、ある行為をしたことで恒心教のターゲットにされてしまった。

●唐澤弁護士のウィキをつくろうとしたところ・・・

「AVの購入履歴まで晒された現時点で振り返ると、私のやり方は、たしかにつたないものでした。しかし、あの時点では、恒心教徒(恒心教のメンバーのこと)が僕を攻撃対象にするとは夢にも思いませんでした」

石渡さんが「つたない」と表現したのは、唐澤氏のWikipedia(ウィキ)ページを開設しようとしたことだ。

石渡さんと唐澤氏には共通点がある。時期は違うが同じ法科大学院に通い、下の名前が共に「貴洋」という点だ。石渡さんは、唐澤氏に一方的な親近感を抱き、同時に唐澤氏がネットリンチの被害に遭っていることを気にかけていた。

ところが、唐澤氏のことをネットで調べようとしても、貶める情報しか検索では引っ掛からない。恒心教がマイナス情報を大量に発信し続ける「検索汚染」を成し遂げた結果だ。

石渡さんは「対抗言論」に出ようとした。検索汚染に負けないぐらい、唐澤氏の客観的で中立な言論があったほうが良い。こうした言論による対抗行為で、唐澤氏の正確な姿を世に伝えようとした。

その具体的な方法として採用したのが、ウィキページを作ることだった。

●自分の名前を使った爆破予告がはじまった


全文 弁護士ドットコム

https://news.yahoo.co.jp/articles/ab2dfbcd2dc4a9c7242150ea5872b6718191c6be
取材に応じる石渡貴洋さん
https://storage.bengo4.com/news/images/13747_2_1.jpg