今夏の東京五輪開催をめぐり、中止を求める声がさらに強まっている。

元日弁連会長の宇都宮健児氏が立ち上げたインターネット上の中止要望の署名は、
開設から2日で22万筆(7日午後6時現在)を超え、まだ増加中だ。

米有力紙は国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長を「ぼったくり男爵」と痛烈に批判した。
緊急事態宣言も5月末まで延長。もはや「詰んだ」状況ではないのか。 


日本国内で高まる五輪中止論。海外からも中止を促す声が相次ぐ。
米有力紙ワシントン・ポスト(電子版)が今月5日に報じたコラムもその一つだ。

国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長を「ぼったくり男爵」と皮肉った上、「地方行脚で食料を食い尽くす王族」
「開催国を食い物にする悪癖がある」と指弾。五輪開催の目的は「カネ」と断じ、五輪の中止は「苦痛を伴うが、浄化になる」と訴えた。

そのバッハ会長は17〜18日に来日する予定だったが、ここに来て雲行きが怪しくなっている。
「こちら特報部」が大会組織委に問い合わせると、「バッハ会長の来日の意向は承知しており、実現すれば歓迎したい。
ただし、具体的には決まっておりません」と返答があった。

一方、IOCは五輪とパラリンピックに参加する各国・地域の選手団にワクチンを提供すると発表した。
5月末にも供給が始まり、7月23日の五輪開幕までに2回の接種を目指す。

ただ日本国内に目を向けると、接種の遅れが目立っている。首相官邸サイトによれば、
医療従事者480万人のうち2回の接種を終えたのは110万人ほどで、全体の2割にとどまる。

高齢者も3600万人のうち、初回の接種が済んだのは0.7%程度の24万人だけ。2回目は「0」と記されていた。

3度目の緊急事態宣言が7日、今月末まで延長されるなど、コロナ禍がますます厳しさを増す中、理解しがたい選手優遇ではないかと、組織委に尋ねると、
「国内の優先接種対象者への影響が出ないことを前提に、検討されるべきものと理解しております」と返ってきた。

インターパーク倉持呼吸器内科の倉持仁院長は「医療現場は今でもコロナ対応に追われている。
五輪のために医師や看護師を割けば現場はより深刻な状況に置かれる。人手が足りないばかりに重症化した人たちに手が回らず、
救えるはずの命が救えないケースが増えかねない」と語る。

さらに「選手の間で感染が広まったときに対処できるのか。医師や病棟が足りず、十分な医療が提供できない可能性もある。
日本で対応できない場合に帰国するのか、移動手段をどうするかも各国と協議が必要なはずだが、具体的な話は聞こえてこない。
準備不足が顕著な中で五輪を開くのは非現実的だ」と指摘する。

長崎大感染症共同研究拠点の安田二朗教授は「各国から来日することで海外の変異株が今以上に入ってこないか」と懸念する。

「既に全世界で1億数千万人が感染した。これだけ多くの人が感染するといろいろな形で変異しうる。既存のワクチンが効かない変異株があるかもしれない。
もし持ち込まれたらワクチン接種の進め方を抜本的に見直さないといけなくなる」


▽デスクメモ 菅首相は7日の記者会見で、五輪選手にはワクチンを優先接種し、PCR検査を毎日行うので、「安心安全な大会」になると述べたが、
そんな優遇を受けられず、安心でも安全でもない状況の一般国民が、選手たちを素直に応援できるだろうか。首相の認識はあきれるほどズレている。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/102934#:~:text=%E3%83%AF%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%B3