テレ東BIZ5/17(月) 11:16配信
https://txbiz.tv-tokyo.co.jp/wbs/feature/post_227467

昨年、新型コロナの感染拡大の影響で店頭からマスクが消え、深刻なマスク不足が問題になりました。国内で流通するマスクの8割を占めていた中国など海外からの輸入が大幅に落ち込んだことが要因です。政府の補助制度もあって国内メーカーが相次いで生産に乗り出しましたが、ここにきて変化が起きています。

1年前は店頭から消えていたマスクですが、都内のドラッグストアを訪れるとたくさんの種類が並んでいます。この店舗では現在、20種類以上のマスクを取り扱っていますが中国製が人気です。

この裏で国内メーカーに異変が起きています。

埼玉県川口市にあるマスクメーカー「シンズ」の工場。中に入ってみると、マスクを生産する機械がありますが、稼働していません。

「以前はもう24時間稼働で、三交代でやっていたんですけれども、生産の計画としてはダウンしています」(シンズ・徐社長)

この会社はもともと中国でマスクの生産を手がけていましたが、日本政府からの補助金6000万円を活用し、昨年3月から国内での生産も開始。約3億円をかけて、1分間に最大1000枚を生産できる特注の機械などを揃えました。

耳にかけるひもに、オムツで使われる柔らかい素材を使うなど品質の違いをアピールしますが、価格は50枚で1280円と中国製の2倍ほどします。価格の安い中国製マスクに押され、今年1月以降、生産量を2割ほど減らさざるを得なくなりました。

「ワクチン接種が終了したら、マスクを着けたくないと思います。来年の今頃は、マスク生産を続けられるかどうか」(徐社長)

さらに深刻なメーカーもあります。兵庫県尼崎市にある「ショウワ」では昨年、大手メーカーのマスク生産を請け負い、多いときで月に250万枚を生産していました。

しかし、倉庫に案内してもらうと、そこにあったのは大量のダンボール。メーカーとの契約が2月で突然打ち切られたため、倉庫には販売先が決まっていない大量のマスクが積まれていました。

「大量に発注してもらっていた客の注文が止まったので、100万枚以上の生産量が落ち込んでいます」(ショウワ・藤村社長)

現在はネット通販で自社製品の販売を強化していますが、設備投資分などを含めると約8000万円の赤字だといいます。

マスクメーカーの業界団体によると、2019年度に約20%ほどだった国産の比率は、国内生産が増えたことで2020年9月には約45%に上昇したものの、現在は約30%ほどにとどまる見通しだということです。

こうした事態について、田村厚労大臣に質問しましたが「マスク不足で医療機関や国民が不安になるので、そんなことがないようにどうしたらいいか、これからしっかり検討してまいりたい」と明確な答えはありませんでした。
専門家はマスクについて、次のように話します。

「今回のコロナのような事態に陥ってしまうと、マスク自体が消費財ではなく、公共財としての性格を帯びてきます。一定の生産能力を保持するために、政府が介入することは政策の選択肢としてあります」(日本総研・三浦有史上席主任研究員)