国立成育医療研究センターの社会医学研究部が行った研究によると、1人で子どもを育てているシングルマザーは、喫煙・飲酒の頻度が高く、睡眠時間が少ない傾向にあることがわかりました。この研究を行った同研究部室長の加藤承彦先生に、今回の研究から考えられる、シングルマザーの健康状態について聞きました。

1人で子どもを育てているシングルマザーの3人に1人が喫煙

今回の研究は、厚生労働省が実施している国民生活基礎調査(※)の2016年データをもとに、5才以下の子どもがいる1万9139世帯のママを対象に実施。ふたり親・ひとり親(シングルマザー)を三世代同居(両親・ママ・子どもが同居)の有無で分け、アンケート結果を分析しました。

その結果、三世代同居なし(=1人で子どもを育てている)シングルマザーは、約3人に1人が毎日喫煙していました。また、飲酒習慣については、三世代同居なしのシングルマザーの12%が「毎日飲酒している」と回答。ふたり親世帯のママは三世代同居あり・なしともに6%、三世代同居ありのシングルマザーは8%でした。

加藤先生(以下、敬称略) 子どもと自分だけの生活は、時間的、肉体的、精神的に余裕がない環境だと想像できます。経済的な問題など不安も大きいでしょう。そうしたストレスを発散する方法として、喫煙や飲酒を選んでいるのではないかと思います。

今回の調査によると、1人で子どもを育てているシングルマザーの15%が、5時間未満しか睡眠をとれていませんでした。7時間以上の睡眠時間をとれている人は少なく、十分な睡眠をとれていないようです。

加藤 同居する大人がいない環境では、育児や家事を分担する、子どもを見てもらっている間にほかのことをする、といったことはできません。1人で子どもを育てているシングルマザーは、恒常的に時間に追われた生活をしていることが、この結果からわかると思います。

加藤 喫煙習慣は子どもの受動喫煙につながり、子どもの健康に悪い影響を及ぼすことがわかっています。さらに、ママの心の健康状態がよくないと、子どもとの愛着形成がうまくいかなかったり、子どもが成長の過程で問題行動を起こしたり、うつ傾向になったりするなどの問題が起きる可能性があります。

(中略)

加藤 健康状態が悪く、社会から孤立した状態で乳幼児を1人で育てているシングルマザーに、自分で何とかしてもらおうとするのは現実的ではありません。行政が自治体のデータを活用してアウトリーチ(支援を必要としている人のところに出向いて働きかけること)をする必要があることが、今回の調査で示唆されました。
日本人は「自分のことは自分で解決しなければいけない」と考えがちで、国もその自助努力に期待しがちです。でも少子化の今は、「子どもは社会全体で育てるもの」と考えるべきです。

まず、1人で頑張っているシングルマザーが、支援を受けやすくする環境を早急に整える必要があります。時間的にも精神的にも余裕のないシングルマザーに、「支援策をいろいろ用意しているから、必要なものを調べて、役所に申請しに来てください」と言うのは、困っている人たちにとっては非常に不親切な対応だと言わざるを得ません。申請方法を簡略化する、オンラインでも申請できるようにするなど、すぐにでも変えられることはあるはずです。

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