都心から離れたくないけど、広い家に住みたい。テレワークの普及で通勤時間を基準にした家選びをしなくてもよいならば、穴場の街は簡単にみつかる。それが、快速・急行停車駅の「隣」だ。AERA 2021年5月31日号は「近郊移住」を特集した。

コロナ禍が私たちの生活に与えたマイナス面は、数え上げればキリがない。だが、プラス面もある。一つはテレワークが増えて、通勤時間にあまりこだわらずに、住まい選びができるようになったことだろう。

 近郊都市に「プチ移住」する動きが広がっている。だが、そこまで思い切った決断をしなくても、少し目先を変えれば、意外な発見がある。それが、快速や急行停車駅の隣だ。

 後段で詳しく説明するが、1駅違うだけで家賃や物件価格に大きな差が出てくる。

 もちろん快速や急行が止まる駅は街の規模が大きく、都心への所要時間も短い。さらに複数の路線が乗り入れるターミナルになっていることも多く、どこに行くにも便利だ。駅前には大型商業施設や公共施設もそろっている。だからこそ、多くの人が住むことを希望し、高いマンションを無理して購入したり、高い家賃を払ったりする。

 だが、毎日通勤する必要がなければ、そうした駅にこだわる理由はない。各駅停車しか止まらなくても、快速や急行ほどは「密」にならないので、精神的にも安心だ。なにより、隣駅なら住宅の価格が安い。より広い家を買ったり、借りたりできるというプラス面もある。

 在宅勤務が増えて、住み替えを考える人が増えている要因のひとつが、より広い家に住み替えたいというニーズだ。

■1部屋増で万事解決

 例えば自宅でワークスペースを確保しようにも、分譲や賃貸住宅のほとんどは、家で働くことを前提につくられていない。リビングで仕事ができればいいほうで、なかにはウォークインクローゼットやベランダ、マイカーが「職場」の人もいる。それも難しければ、駅前のカフェやシェアオフィスに場所を求める人も少なくない。

 そんな状況も、1部屋増えれば、たちまち解決する。ワークスペースさえ確保できれば、家族に気兼ねせずに仕事に集中できるし、ほどよい距離感が良好なコミュニケーションにつながる。家族の絆が強まるといった好循環すら期待できるのだ。

実際のところ、1駅違うだけでどれくらい安いのだろうか。ここでは通勤ラッシュが激しい東京周辺に焦点をあて、いくつか例に挙げよう。

 最初に取り上げるのは、東急東横線の武蔵小杉駅(川崎市中原区)。タワーマンションが林立する首都圏屈指の人気エリアだ。特急が止まるため東京・渋谷や横浜へのアクセスがよく、さらにJR南武線・横須賀線・湘南新宿ラインなど多数の路線を使いこなせる。

 駅前には「グランツリー武蔵小杉」「武蔵小杉東急スクエア」といった大規模商業施設がそろう。通勤や生活に便利なため、住宅価格が急騰している。

 不動産専門の調査会社・東京カンテイによると、武蔵小杉駅周辺の中古マンション(70平方メートル換算)の平均価格は6419万円にもなる。ふつうの会社員には荷が重い価格ではないだろうか。

 それが東京から一つ先の元住吉駅だと、4835万円に下がる。平均築年数が異なるので単純比較はできないが、武蔵小杉より1500万円以上も安く手に入れることができる。これなら何とかなるという人が多いのではないだろうか。また、住宅情報サイト「SUUMO」の調べでは、3LDK以上のマンションの賃料は1万円ほど安い。

 駅前には首都圏でも有数の商店街が広がっていて、暮らしやすさは抜群だ。同じ金額を出すなら、武蔵小杉よりも、ひと回り広い住まいが手に入るだろう。リフォームに多少お金がかかるのを覚悟して、在宅勤務用のワークスペースを設置しても、十分にお釣りがきそうだ。

 しかも、渋谷駅までの所要時間は大差がない。武蔵小杉駅は13分で、元住吉駅は17分。たった4分ガマンするだけで、これだけの価格差があるのだから、コロナ禍に対応した「移住先」として、うってつけの場所ではないだろうか。


5/29(土) 7:00
配信
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