後藤一也、阿部彰芳2021年6月9日 9時00分

 子宮頸(けい)がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を防ぐワクチンが使われ始めて10年ほどたち、実際の効果が国内外で報告され始めている。一方、国内では、厚生労働省が接種の積極的な勧奨を控えて6月で8年になる。(後藤一也、阿部彰芳)




HPVの感染率、ワクチン接種でリスク低下

 新潟大の榎本隆之教授(産婦人科)らは、新潟県内で子宮頸がん検診を受けた20〜21歳の女性について、がんを起こしやすいHPVの16型と18型の感染率を調べている。

 ワクチンの接種率が9割ほどの世代では、16型か18型のどちらかに感染している人は2837人中10人(0・4%)なのに対し、接種を積極的にすすめなくなり接種率が4割ほどになった世代では646人中11人(1・7%)。榎本さんは「感染率が、接種が始まる前の世代の数値に戻りつつある」と話す。

 榎本さんのチームは19年、約1500人を対象に16型と18型の感染率を調べ、初めての性交前にワクチンをうった人は、うっていない人に比べ、感染リスクが93・9%下がっていることを報告している。

 子宮頸がんの95%以上は、HPVの感染が原因とされる。主に性交渉で感染し、5〜8割の女性が一度は感染し、約1割の人で感染が持続する。感染からがんになるまでは数年以上かかる。「異形成」という異変が細胞に起き、「上皮内がん」という状態をへて、がんに進行する。

 大阪大などのチームは昨年、23道府県の31自治体に協力してもらい、公的な接種記録を使った調査の結果を発表した。調査の対象は、2013〜16年度に子宮頸がんの検診を受けた20〜24歳の1万5千人。接種を受けた人では、軽度以上の異形成のリスクが58%下がり、中等度以上の異形成のリスクが75%下がっていた。

https://www.asahi.com/articles/ASP675TN9P5PULBJ00W.html