大統領府の国民請願の掲示板に「生徒たちにフェミニズムを洗脳する教師組職がある」という文章が掲載されてから1カ月が過ぎた。この請願は「4年間で生徒をいじめる方法まで動員し、組織的にフェミニズムを洗脳する教師団体が活動しているものと推定される」とし、捜査を求めた。この文章は7日午後5時現在、30万6519人の賛同を得ている。答弁する基準を満たしているため、今月19日に請願が締め切られれば、政府または大統領府が答弁しなければならない。

 請願文が最初に掲載されてから34日が過ぎたが、現在までに「フェミニズム洗脳組織から教育を受けた」という情報などの、関連する情報提供は皆無だ。教育部の関係者は7日、本紙との電話インタビューで、「この事案に関して、自分が被害者であることを明かしたり、周囲から疑わしい事例を目撃したりしたという情報は1件もない。もしこれに関する情報を知っていたら、(捜査を行う)慶尚北道警察庁に通報してほしい」と述べた。この事件を捜査している慶尚北道警察庁も「現在まで被害の情報や目撃者の陳述はない。請願人が指摘したウェブサイトのIPアドレスが米国と確認されたため、国際協力捜査要請を送った状態だ」と述べた。

 フェミニズムを洗脳する地下組織の実態は不明だが、学校現場で性教育が萎縮している雰囲気ははっきりと感知されている。本紙が全国教職員労働組合(全教組)を通じて、当請願が上がってきた先月5日から今月5日までの1カ月間、現場で起きた出来事をまとめたところ、性教育を疑って検閲する雰囲気は教師や生徒はもとより教育庁関係者や保護者まで、様々な教育主体から感知された。

 「先生、社会的性って何ですか?」地域のある小学校の保健教師は、この質問に答えた翌日、6回も抗議の電話を受けた。教師は生徒たちに「社会的性(ジェンダー)とは『生物学的性』と区別される社会・文化的性のことだ」と簡単に説明した。翌日、保護者を名乗る苦情者が「大統領府の国民請願に寄せられた『フェミニズム洗脳組織』の文章を読んで、まさかと思って電話した。子どもたちに社会的姓を教えるとはどういうことか。そっち(性的マイノリティ、トランスジェンダーを指すとみられる)に導こうとしたのではないか」と強く抗議した。

 6回もかかってきた電話番号はそれぞれ違っていたが、学校が苦情に返事するためにかけ直してみたところ、電話に出なかったという。保護者の非常連絡網にもない電話番号だった。同校の教師のAさんは、「こうした事件に接しているうちに、授業中に家族の形態について説明したりする時、もしかすると問題になるのではないかと、自分でも気づかぬうちに検閲をするようになってしまう」と話した。

 別の教師は教育庁の関係者から「性教育があまりにも急進的に行われている。調節が必要だ」という趣旨で言われたという。この教師は「性暴力事件の解決を支援し、性的に平等な教育文化を築いていく業務を担当する主体が、事実関係が確認されていないことを根拠に判断して、教育政策の方向を変えてしまうのではないかと心配だ」と話した。

 性教育に対する疑念と検閲は、学校の外でも激しい。性差別教育廃止市民連帯は3日、団体発足式を行った。この日、同団体のオ・セラビ代表は「教師がフェミニズム思想教育を注入する非正常な方法で子どもたちを窒息させている。性教育、性平等教育などはすべてフェミニズム教育だ」と主張した。同団体に合流した全国学生守護連合のキム・ファラン代表も先月25日、ソウル市教育庁前で記者会見を開き、「自分と意見が異なる生徒をいじめる事例に対する被害情報が全国で共通して寄せられている」と主張した。しかしキム代表は、「被害事例」を教育部や慶北警察庁に通報してはいないという。キム代表は本紙の電話取材に対し、「(提供情報の中には)時間が少し過ぎた事件もあり、また最終的な判断は本人がするのが正しいと思い、教育部と慶北警察庁に私からは通報しなかった」と話した。

 性教育が委縮する間、教室内の「バックラッシュ」はさらに激しくなっている。ある地域の高校では、教師が授業中に資料を指差そうとして偶然「指でつまむ」手のポーズを取り(指でつまむポーズは、女性コミュニティ「メガリア」で男性を蔑視するときに使用する表現といわれる)、それを見た生徒たちが手の形をまねて笑っていたという。
https://news.yahoo.co.jp/articles/0275516cc0503dae44d4423e3b56cede7a348d28