人類初「AIと融合」した61歳科学者の壮絶な人生
「ネオヒューマン」の生活は喜びと希望に溢れる

藤田 美菜子 : 翻訳家

2021/06/11 4:30

イギリスのロボット科学者であるピーター・スコット-モーガン博士は、全身が動かなくなる難病ALSで余命2年を宣告されたことを機に、人類で初めて「AIと融合」し、サイボーグとして生きる未来を選んだ。
「これは僕にとって実地で研究を行う、またとない機会でもあるのです」
彼はなぜ、そんな決断ができたのか。人間が「AIと融合」するとはどういうことか。それにより「人として生きること」の定義はどう変わるのか。ピーター博士が自らの挑戦の記録として著わし、発売直後から世界で話題騒然の『NEO HUMAN ネオ・ヒューマン――究極の自由を得る未来』が、6月25日、ついに日本でも刊行される。
本書の邦訳を担当した翻訳家の藤田美菜子氏に、ピーター博士の「壮絶で幸せな生き様」を解説してもらった。
https://toyokeizai.net/articles/-/431183?display=b






希望に満ちた「現実世界のサイボーグ」

「サイボーグ」と聞いて、あなたは何を連想するだろうか?

石ノ森章太郎の『サイボーグ009』では人間兵器として改造された主人公。懐かしの海外ドラマ『600万ドルの男』では、瀕死の事故からサイボーグとして蘇生され、スパイにスカウトされる主人公。フィクションの世界では、悲惨な境遇の持ち主として描かれることが多いかもしれない。

しかし、「現実世界のサイボーグ」は、もっと希望に満ちた存在だ。

本書『ネオ・ヒューマン』の著者、ピーター・スコット-モーガン博士が、「人類初のフルサイボーグ」になることを決意したのは、難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)の患者として「ただ生き延びる」のではなく、「人生を思い切り楽しむ」ためだった――。

経営戦略コンサルタントとして、若くして大きな成功をおさめたピーター博士は、50代を前にアーリーリタイア。同性のパートナーであるフランシスと世界中を旅しながら暮らす、悠々自適の生活を手に入れる。

しかし、人生のお楽しみはまだこれからというタイミングでALSを発症。博士が58歳のときだった。

ALSといえば、かのスティーヴン・ホーキング博士が患った病気としてご存じの読者も多いだろう。よく知られているように、全身の筋肉が段階的に動かなくなっていき、最終的には自分の体に「閉じ込められた」状態になる病気だ。意識は完全に保たれているにもかかわらず、まばたきをしたり目玉を動かしたりする以外、外部との意思疎通もままならなくなる。

それゆえに、ALSは「最も残酷な病気」などと形容されることが多い。しかしピーター博士は、絶望するより先にこう考えた。「それって、本当なのか?」と。

これは決して「現実逃避」などではない。「鋼(はがね)のメンタル」というようなものでもない。人生の中で何度も大きな挫折に遭遇しているピーター博士は、そのたびに真正面から傷つき、眠れない夜を過ごしてきた。

そんなとき、ピーター博士が必ず頼りにするのは、「思考」という武器だ。

7歳にしてアインシュタインに魅せられたピーター博士は、科学者のマインドセットを何より重んじ、つねにあらゆる前提や常識を疑う。そして、あらゆる選択肢や仮説を検証し、「変化を起こす」ための道を追求しつづける。

だからこそ、どれほどの強敵を前にしても、ピーター博士にとって「敗北」はありえない。考えることをやめさえしなければ、必ず戦況を変えることはできるはずだからだ。





さまざまな「迫害」に勝利し続けた波瀾万丈な人生
     ===== 後略 =====
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