日経Xtrend7/15 6:00
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2021年の大学受験で最も大きな話題の一つだったのが、早稲田大学の政治経済学部(以下、政経)の数学必須化だ。一般選抜(募集300人)で、この年から新たに始まった「大学入学共通テスト」の「数学T・数学A」を「国語」「外国語(英語などから選択)」と共に必須科目にしたのだ。他の私大文系学部は英語、国語、社会の3科目で受験できることが多い。一般的な文系学部志望者にとって、早稲田の政経はこれまで以上にハードルが高くなったと見えた。これに、コロナ禍による受験生の安全志向が重なり、政経の21年の志願者数は5669人と、20年(同7881人)から28%も減った。それでも政経が数学を入試に取り入れたのは、一言でいえば「入学後の勉強に必要だから」だ。

「もともと経済学では数学の知識が必要でしたし、政治学でも近年は統計学やゲーム理論など数学的な学問をよく使います。入試でどのレベルの数学を課すかは議論がありましたが、まずは高校1年生で必ず学ぶ数学T・Aが適当だと判断しました」「また従来の3科目受験では、点差がつきやすくしようとするあまり、詳細な知識が必要となる問題になりがちでした。日本史で『種子島に伝来した鉄砲は何丁か』が問われるという噂が受験業界で立つほどです(笑)。それよりも、大学入学共通テストの4科目(配点の50%)で基礎的な知識を判定し、日英両言語による長文を読み解いたうえで解答する、政経独自の『総合問題』(配点の50%)によって思考力や判断力を見る方が、総合的な力を判断できて良いと考えました入学後「数学U・B」の未履修者には、微分・積分などを含む数学のオンライン授業(「数学基礎プラスα」など)の履修を求める。十分な理解のために「数学支援室」でTA(大学院生)による個別指導も行っているという。

●20年かけて進めてきた国際化
ところで、政経は21年になっていきなり入試だけを刷新(入試改革の発表は18年)したわけではない。齋藤氏によれば、改革は20年をかけて徐々に進められてきたという。約20年前にまず変わったのが教員人事だ。それまで政経の専任教員は早稲田大学出身者が大半だった。しかし「海外の大学から早稲田に戻ってきた教員から、『今のままでは国際的に通用しなくなる』との声が挙がり、早稲田卒を優先しない方針になりました」。代わりに政経は00年ごろから、採用時に国際公募を積極的に展開。これにより海外で学位を取った優秀な人材が徐々に集まるようになった。現在は、およそ半数の教員が海外有力大学の学位を持つという。

研究者にとって、同じ分野で優れた実績のある同僚が近くにいるメリットは大きい。この改革は、研究力の面では既に結果が出ている。例えば、科研費の配分額を研究区分別に見ると、政治学系と経済学・経営学系の2区分の新規採択件数(18〜20年の累計)で、早稲田大学が全国1位を獲得している(慶応義塾大学は経済学・経営学系で5位)。英国の高等教育評価機関が実施する「QS世界大学ランキング」でも、政治学ではアジアでトップ3の常連。世界でも50位以内に入ることが増えてきた。

そして、政経のもう一つの変化が英語教育の徹底だ。00年まで語学の授業は1クラス40〜50人が一般的で、とても参加型と言える内容ではなかった。そこで、生徒4人をチューター1人が教える参加型の英語教育プログラム(チュートリアルイングリッシュ)を02年に新たに開講。03年から政経では必修科目とした。また10年9月からは、英語による授業履修のみで学位を取得できる「英語学位プログラム」(EDP)をスタート。徐々に規模を拡大し、現在は1学年当たり100人以上の留学生、海外高校出身者がこのコースで学ぶ。これにより、英語で受けられる授業の数が飛躍的に増えた。

ポイントは、EDPの授業の多くは、政経の一般の学生も受講できること。これまでは仮に海外に留学をしたとしても、帰国してから英語を活用する機会が少なかった。EDPができたことで、身に付けた英語力を使いつつ留学生などと交流できる環境が身近になったのだ。こうした施策により、各学年で約2割の学生が、在学中に半年以上の留学を経験するようになったという。

■政治学と経済学の融合を狙い、カリキュラムも改定
そして、政経改革のもう一つの柱と言えるのが政治学と経済学の融合だ。まず04年に「国際政治経済学科」を新設。政治学、経済学、公共哲学をバランス良く学ぶことで、様々な政策提言ができる人材を育てることを目指した。

また14年に、80年近く使われていた旧3号館を解体した跡地に、14階建ての新3号館が完成したのも大きい。教室数が増えたことで、少人数の演習科目を増やしやすくなった。
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