時短営業に応じた飲食店に協力金を早期支給する東京都の先払い制度への申請件数が低調だ。制度開始から約2週間の件数は約2万3000件と従来の協力金の半分ほどにとどまる。先払いは対象期間中の協力金の一部しか支給されず、飲食店が全額を受け取るには別途申請が必要。手続きの二度手間が敬遠の要因とみられる。(大島宏一郎、畑間香織)
◆規模大きいほど恩恵なく
 協力金の先払いは、事業者から支給が遅いとの批判を受け、国が4度目の緊急事態宣言を発令した際に導入された。ただ、実際に先払いされる金額は宣言期間51日のうち、1店当たり日額4万円の28日分(112万円)しかない。
 先月19日から受け付けを開始した都の申請件数は、先月30日時点で2万3696件。手続き開始から約2週間でいずれも4万件を超えた直近3回の協力金(3〜5月)への申請件数と比べると伸び悩みは明らかだ。
 先払いに対しては、飲食店から「手続きが分かりにくい」との声が漏れる。宣言終了予定の8月31日までの協力金を全て受け取るには、事業者は先払いだけでなく差額分の申請も別途必要だ。都の担当者は「1回の申請でまとまった金額を受け取りたい事業者もいるのでは」と推察する。
 協力金の日額は店舗ごとの売り上げに応じて10万円まで増える。だが、先払い金は一律4万円にとどまるため、規模が大きい事業者ほど先払いの恩恵は小さくなるという問題もある。
◆「メリットない」
 時短に応じた店舗に支給される協力金の「先払い」では、手続きの二度手間を理由に申請を見送った事業者が現れている。まだ払われていない過去分の協力金の額が、今回の先払いより大きい事例もあり、未支給分の手続きを優先してほしいとの声も根強い。

 江東区でスポーツ居酒屋を営む高橋利一さん(53)は、東京都の先払い制度を申し込むのをやめた。「(先払いによる)2回申請は分かりにくいので、1回で済ませたい」というのが理由だ。
 先払い申請の二度手間に関しては、外食事業者でつくる日本フードサービス協会の石井滋常務理事が「事務作業に時間をとられ、労力が相当かかる」と事業者の胸の内を代弁する。
 都はこの先払いの手続きを急ぐあまり、5月12日〜6月20日に協力した分の申請開始日を先月15日から同26日に延期した。担当者は「先払い分の方が早く支給される『逆転現象』が起きる可能性は高い」と説明。さらに、4月分の支給が遅れる懸念さえある。
 大田区でビアレストランなど2店を営む大屋幸子さん(43)は「メリットはない」と断言。日額10万円となる4月以降の協力金が未入金なため「既存分を早く出して」と訴える。
◆「5、6月分を早く」
 江戸川区で沖縄料理店など2店を営む児玉幸太さん(41)は先月29日に先払い金を受け取った。金融機関に借りた資金の返済が始まっており「少しでも入ってくる方が安心」と話したものの、「日額5万円超の5月、6月分を先にほしい」との本音を漏らす。

 事業者からは、日額で一律4万円と協力金の一部にしかならない先払いより、事業規模に応じて最大10万円となる未支給分の手続きを優先させてほしいとの声も少なくない。飲食店経営者でつくる「全国飲食業生活衛生同業組合連合会」の小城哲郎・専務理事は「規模が大きい店ほど家賃の負担は重い。(先払いの)日額4万円だけでは足りない」とみる。

東京新聞 2021年8月3日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/121391