ナショナル ジオグラフィック日本版
8/3(火) 9:05配信
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/21/073000382/

失われた大陸「ジーランディア」を証明する最後のピースとなるかもしれない

 南太平洋に、マオリ語で「テ・リウ・ア・マウイ」と呼ばれる失われた第8の大陸「ジーランディア」が隠れている。現在、約490万平方キロメートルにおよぶジーランディアの大半が海底下にあり、ニュージーランドの島々は海上に突き出たこの大陸の一部だ。

 ジーランディアは最近になってその存在が科学者たちに認められた。これまで知られている中で、最も多くの部分が海中にあり、最も薄く、最も若い大陸だ。

 2018年の夏、ニュージーランドの研究機関GNSサイエンスの地質学者ローズ・ターンブル氏は、ニュージーランドで採取された細かい砂粒の中から、ジルコン(ケイ酸ジルコニウム)の小さな結晶を探し集めていた。ジーランディアがどのように形成されたのか、この結晶が謎を解くカギとなることを期待していた。

 そこから明らかになったのは、思いがけない事実だった。ニュージーランドの南島とスチュワート島の下に、今から10億年も前の「超大陸」の陸塊の痕跡が隠れていたのだ。この発見は、ジーランディアがこれまで考えられていたほど新しくないことを示唆しており、大陸としての地位を強固にする可能性がある。

 ターンブル氏らによる論文は2021年5月12日付けで学術誌「Geology」に掲載された。この発見は、長年にわたり科学者たちを当惑させてきた謎を解く助けになるかもしれない。

 ほとんどの大陸は、クラトン(安定陸塊)と呼ばれる、10億年以上前にできた安定な大陸地殻の上に形成されている。ところが、これまでに見つかっていたジーランディアの大陸地殻は地質学的に新しく、最も古い部分でも約5億年前のものだったのだ。ジーランディアが大陸であるなら、なぜクラトンがないのだろう、というのが謎だった。

 今回発見された古い岩石の断片は、ジーランディアの“欠けていたピース”かもしれない。ターンブル氏は、この発見により「最後のチェック項目が満たされました」と話す。「私たちは確かに大陸の上にいるのです」

 今回の発見は、ジーランディアだけでなく、すべての大陸地殻がどのようにして形成されたのかという、より大きな謎にも関わっていると、米カリフォルニア州立大学ノースリッジ校の地質学者で花崗岩を専門とするジョシュア・シュワルツ氏は説明する。

「地殻は地球のいちばん上にあります。すべての生命活動が、この薄い層で行われています」と氏は言う。私たちは大陸地殻の上に住み、作物を育て、水を引き、鉱物を採掘する。「私たちの生活のすべてが地殻の上に成り立っていると言ってよいのです」

失われた大陸の発見

 科学者たちは何十年も前からジーランディアを追い求めてきたが、これを大陸として定義するのには厄介な問題があった。「実は、地質学には大陸の明確な定義がないのです」とシュワルツ氏は言う。

 大陸としての重要な要素の1つに、岩石の組成がある。ニュージーランドの周囲の海底は、海洋地殻によく見られるマグネシウムや鉄が豊富な岩石ではなく、大陸地殻によく見られるような、シリカを多く含む花崗岩などの岩石からできている。また、この岩石が広がる面積は広大で、周囲の典型的な海洋地殻に比べて著しく厚く、高くなっている。

 GNSサイエンスのニック・モーティマー氏が率いる科学者チームは、2017年にこうした点を挙げ、ジーランディアを大陸と呼ぶべきだと提唱した。だがその一方で、奇妙に思われる点についても言及している。ジーランディアにはクラトンがないように見えたのだ。

「おかしなことです」と米バーモント大学の構造地質学者キース・クレペイス氏は言う。大陸地殻は海洋地殻に比べて浮力が大きいため、表面の岩石をマントル内に戻すプロセスに逆らう傾向がある。安定した大陸地殻であるクラトンが土台となり、プレートのゆっくりとした運動によって運ばれた島弧などの陸塊が大陸地殻の端に積み上げられ、大陸が成長していくのだ。

 これまで、ジーランディアの最古の地殻は、ジーランディアがゴンドワナ大陸の端にあった約5億年前に形成が始まったと考えられていた。
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