当初、下馬評では「大本命」だった河野氏だが、土壇場で野田氏が推薦人をそろえて出馬。総裁レースは混とんとしてきた。
「ネットだけなら、高市氏でしょうね」

こう話すのは、自民党の閣僚経験者だ。出馬表明の動画の再生回数に至っては、岸田氏が3万回、河野氏が22万回のところ、高市氏は211万回と圧倒的な数字だった。(9月15日現在)
総裁選の演説会がテレビなどで放送が始まった17日午後、ツイッターでは「#自民党総裁選」、「#高市早苗さんを支持します」がトレンド入りした。

河野氏のツイッター・フォロワーが242・2万人。安倍晋三前首相の227・9万人を上回り、政治家でもトップクラスだ。
総裁選に向けて開設したアカウントでもすでに15・6万人のフォロワーがいる。

一方、ネットでは河野氏に肉薄する高市氏の総裁選用のアカウントは9・3万人のフォロワーだ。高市氏支援の国会議員は分析する。

「高市氏は総裁選の出馬会見なのに靖国神社参拝を断言し、中国との関係に言及するなど保守層に強く訴える戦略です。
いわば、安倍政治継承を全面に打ちだした結果、高市人気につながっているのでないか。
出陣式でも議員と代理の秘書で90人が集まった。これは議員票が90票という裏付けにもなる」

高市氏も総裁選の推薦人名簿には、古屋圭司衆院議員が選挙責任者、参院議員の山谷えり子氏などが名前を連ねるなど保守色が強いことがうかがえる。
また推薦人は清和会から7人、竹下派2人、二階派5人、無派閥6人。安倍氏の清和会だけではなく、幅広く集っていることも、手応えにつながっている。

永田町でも高市氏が本命・河野氏、対抗・岸田氏の間に割って入るのではないのかという見方も広がっている。

その理由の一つがキングメーカー・安倍氏の「暗躍」だ。
安倍氏は高市氏が出馬表明すると、そうそうに支援を打ち出すツイートをしている。

<コロナ禍の中、国民の命と生活を守り、経済を活性化する為の具体的な政策を示し、
日本の主権は守り抜くとの確固たる決意と、国家観を力強く示した高市早苗候補を支持いたします。世界が注目しています。皆さま宜しくお願い申し上げます>。

「高市氏の評判がけっこういいので、安倍氏は『勝負できる』と言い、上機嫌だ」と清和会の国会議員は話す。

しかし、懸念もあるという。「わざわざ若手議員の携帯電話を鳴らして『高市氏を応援してほしい』と話していた。
高市氏のことを思っての行動なのでしょう。しかし、若手議員からすれば、安倍氏から電話がきただけでびっくりする。
ある議員は『直接、言われると、何も言えない』と苦悩の表情でした。つまり、プレッシャーととらえられてしまう。

その存在がとてつもなく大きい安倍氏が、動くことで、反対に作用する危険性もある。
今回、岸田派以外の派閥が基本的に自主投票となっているので、余計にそういう印象を与えてしまう。
また高市陣営は出陣式で90人を超す人が集まったが、安倍氏の顔色を見て、駆け付けたという議員や秘書もけっこういると思います」(同前)

総裁選の出陣式では、高市氏は安倍政治とそっくりのフレーズ「日本を守る高市早苗、美しく強く成長する国、日本」と訴え、威勢よく攻める演説だった。
総裁選に合わせた新刊本『美しく、強く、成長する国へ』(WAK社)も保守色が濃い。

「安倍氏もさることながら高市氏の思想的なバックボーンは、ジャーナリストの櫻井よしこ氏なんです。
櫻井氏は安倍以上に急進的とも言われる伝統的保守論者です。その過激さから高市氏以上にインターネット上の保守層に支持を得ており、
その界隈では大きな影響力を持っています。実際、高市氏と櫻井氏は数十年にわたる交流がある。著書でも櫻井氏の思想が色濃く反映されている。
櫻井氏が高市政権誕生の暁には、政策ブレーンに就任するとの説も永田町では流れています」(官邸関係者)

今回の総裁選出馬に先立って作成されたポスターも、高市氏と櫻井氏の2連となっている。
12月に高市の地元・奈良において二人で街頭トークを行う予定と記されている。

「櫻井氏が主張する夫婦別姓反対、女系天皇断固反対、強硬な対中政策なども含め、高市氏の公約は櫻井氏の思想にシンクロしている。
河野氏が賛意を表明した同性婚に至ってはもってのほかという伝統的な家族観を重視する姿勢を共有していますね」(同前)
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