今回の総裁選。当初、推薦人20人の確保さえ不透明とみられていた高市氏だが、安倍氏のバックアップを得ると保守層の「受け皿」と認知され、短期間のうちに勢いを急伸させた。
安倍氏は連日、細田派の若手らの携帯電話を自ら鳴らし、周囲にはこう語気を強める。
「首相時代、どれだけ選挙の応援に行ったか。(向こうから)裏切られるようなことがあったら、こっちから縁を切る」。
警告のメッセージは、じわじわ党内に伝わっていく。

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 その一方で、高市氏への度を越した傾注は、あくまで党員票で優位に立つ河野太郎行政改革担当相を勝たせないがため、その支持を分散させることが安倍氏の真意、と見る向きもある。どういうことか。

 自らを指導者と仰ぐ者たちの数を見せつけ、衆院選後に細田派復帰、会長就任を果たし、「キングメーカー」として君臨する−。

 こうした安倍氏の戦略は、不倶戴天(ふぐたいてん)の敵である石破茂元幹事長、党内の既得権益への対抗意識を隠さない小泉進次郎環境相と組んだ「河野政権」下にあっては、画餅に帰してしまう。
安倍路線の継承者だった菅義偉首相が、河野氏支持を表明したことも安倍氏の心中に影を落としている。
その以前に、当選3回以下の「安倍チルドレン」が衆院選に不安を覚え、「選挙の顔」を求めて河野氏に軸足を移していくような事態は、安倍氏にとってマイナスでしかないのだ。

 仮に、河野路線に沿う形で世代交代が進めば、保守層の間に待望論がある安倍氏の首相「再々登板」も遠のく。
当の安倍氏は、周囲を「桂太郎も、3回目(の首相)をやってから評判が落ちたからね」とけむに巻き、待望論を歯牙にもかけない姿勢を見せてはいるが…。

安倍氏の本命はかつて、「意中の人」と語った当選同期の岸田文雄前政調会長とされた時期があった。
最近実施された報道各社の調査の中には、国会議員票では岸田氏が河野氏をしのぎ、高市氏も河野氏に迫りつつあるとの結果も出ている。
いわば「詰み」の展開が視野に入ってきたのか、24日、いよいよ終盤戦に突入した総裁選の感想を安倍氏はこう漏らしたという。
「河野氏の主張は迷走している。私だったら、もっとたたかれているよ」
https://news.yahoo.co.jp/articles/86258981ac94bbf7d4519a135183e222b9dee82f