https://news.yahoo.co.jp/articles/2317167c7bcdfc4550e43cd8a21e4244ae851f0d
【食と健康 ホントの話】
 納豆や長芋、オクラ、なめこ、めかぶなどの海藻類のネバネバは、腸に良いと言われている。
このネバネバは水溶性食物繊維で、「ムチン」「ペクチン」「フコイダン」「アルギン酸」などが知られている。

海藻類に多く含まれるのはアルギン酸で、海藻類から抽出しナトリウムで中和した「アルギン酸ナトリウム」は、増粘剤やゲル化剤など、食品の品質改良材として広く用いられている。
慶應義塾大学薬学部とカイゲンファーマ株式会社(大阪市)の研究グループは、このアルギン酸ナトリウムが腸内細菌を介して、
メタボリックシンドローム(以下メタボ)を抑制することを明らかにした。

アルギン酸ナトリウムはこれまで、体重増加を抑える、コレステロールを減少させるなど、メタボに対する効果が報告されている。
そのメカニズムは、食事で摂取した脂質を物理的に吸着し、小腸からの脂肪酸やコレステロールの吸収を抑えると考えられていた。
またアルギン酸ナトリウムは、一部の腸内細菌によって利用されることが知られている。
そこで研究チームは、アルギン酸ナトリウムは腸内細菌を介して メタボの抑制に働いているのではないかという仮説のもとに研究を開始した。

まず、メタボ抑制効果を確認するために、高脂肪食を与えたマウスにアルギン酸ナトリウムを同時に与えた。
その結果、アルギン酸ナトリウムを与えていないマウスと比べて、与えたマウスでは、高脂肪食を食べさせた後の体重増加量や血中コレステロール値、
脂肪・肝臓重量、肝臓脂肪滴が有意に減少し、耐糖能(血糖値が高くなったときに、正常値まで下げる能力)も改善していた。

そこで、腸内細菌が関与しているかどうかを検証するため、高脂肪食を与えたマウスにアルギン酸ナトリウムを摂取させる際に、抗菌剤を投与。
その結果、高脂肪食を与えた後のアルギン酸ナトリウムによる体重増加抑制や耐糖能改善、血中コレステロール値の低下は見られなくなった。

続いて、アルギン酸ナトリウムによって腸内細菌叢(そう=種類)が変化するかどうかを検証。
高脂肪食を与えて4週間目のマウスにアルギン酸ナトリウムを同時に摂取させたところ、最優勢菌群の1つであるバクテロイデス属菌が著明に増加。
同属菌の割合と正の相関を示す代謝物(相関代謝物)も同定された。

さらに、アルギン酸ナトリウムの摂取により、腸管の炎症性マクロファージの数が変化するかどうかを検証。
高脂肪食を摂取すると、腸内環境が炎症状態に傾き、腸管内へ浸潤する炎症性マクロファージ(白血球の一種で炎症を引き起こす)がメタボを進めてしまうことが報告されているためだ。
その結果、アルギン酸ナトリウムの摂取により、大腸内の炎症性マクロファージの割合が低下し、逆に抗炎症性のマクロファージの割合が上昇。
以上のことから、アルギン酸ナトリウムはバクテロイデス属菌を介して腸管の炎症性マクロファージを減少させ、メタボを抑制している可能性が示された。

慶應義塾大学薬学部創薬研究センターの金倫基教授は、
「アルギン酸ナトリウムが腸内細菌叢の組成や代謝物を変化させることにより、腸管内の炎症を抑え、メタボを抑制することが新たに分かりました。
今後『腸内環境を健全に保つことでメタボを予防し得る』ということが広く知られるようになるとともに、メタボの予防・改善を目的とした腸内環境を変化させる食品・医薬品の開発が期待されます」
と話している。