「体調不良をすぐに報告しなかったことを理由に労働契約を打ち切られた」 「ワクチンを接種しなければクビにすると脅された」。
新型コロナウイルスを巡り、職場などで行き過ぎとも取れる対応が相次いでいる。

差別を防ぐために条例を施行する自治体もあり、日本弁護士連合会などは「過剰な措置は人権侵害に当たる恐れもある」として
冷静な対応を呼びかけている。


日弁連や自治体に寄せられた相談事例

感染者でも濃厚接触者でもないのに無給で自宅待機させられた
職場でつける名札にワクチン接種の有無を表示された
通っている学校で感染者が出たことをアルバイト先が知り、解雇された
ワクチンを接種しないと看護学校の実習を受けさせないと言われた


新型コロナワクチンは感染拡大の防止に大きな効果があったが、接種は任意であるのに、強要するかのような事例も目立っている。

「ワクチンを接種しなければクビと言われた」(臨床工学技士)、「アレルギー体質のため接種を拒否していたのに強要された」(介護施設職員)、
「接種するよう職場で同調圧力がある」(市役所職員)。

日弁連が今年5月に行った電話相談には、約200件の相談が寄せられた。職員ごとにチェック表が貼り出され、ワクチン接種の有無が公開されている職場もあったという。

過剰な対応を防ごうと、対策に乗り出した自治体も増えている。高知県は7月、個人や事業者に対し、感染の疑いがある人やワクチンの未接種者らへの差別的な取り扱いや中傷、
いじめなどを禁止する条例を施行。栃木県那須塩原市は8月、すでに制定していた感染者への差別防止条例の対象を未接種者らにも拡大する内容に改正した。

日弁連人権擁護委員会委員長の川上詩朗弁護士は「感染防止はもちろん大事だが、働く権利なども生活を支えるうえで非常に重要だ」と強調。
「解雇などの重い措置には本来、正当な理由と慎重な手続きが求められる。双方で十分に時間を取って話し合うなど、丁寧で冷静な対処に努め、感覚的な対応は避けるべきだ」と話している。
https://www.yomiuri.co.jp/local/kyushu/news/20211016-OYTNT50058/