iPhoneを展開するアップルは、10年ほど前から時価総額世界トップの座に君臨している。
この10年間の株価上昇率を見ても、12倍にも膨れ上がっている。

実は、日本人はかなりアップルの株価上昇に貢献している。
スマホ市場におけるiPhoneのシェアを国別に比較すると、何とトップは日本である。
アップル本社のある米国よりもiPhoneの利用率が高いのである。

世界全体で見るとアンドロイドのスマホのシェアが71%であり、台数ベースで見れば「iPhoneが主流である」とは言えない。
内訳を見ると、先進国のほうがiPhoneのシェアが高いことが分かる。
理由はiPhoneの値段が高いからである。


iPhoneは値段が高いだけでなく、利益率も高い。
2019年のデータでは、世界全体のスマホ市場の利益のうち66%をアップルが稼いでいる。

以前はもっと利益のシェアが高く、15年第1四半期の調べでは、スマホ市場のアップルの営業利益シェアは92%もあった。
当時は世界で1000社以上がスマホの本体を製造していたが、利益を出していたのはアップルだけと言ってもいい状態だった。
台数だけで見ればアンドロイドスマホのほうが多く流通しているにもかかわらず、だ。  

ここまで見れば、アップルの時価総額が高い理由はとてもシンプルである。
そう、めちゃめちゃ儲(もう)かっているからだ。


私の家ではアップル製品は一つも使われていない。その理由は、「利幅があまりに大きい商品を買ってはいけない」という、消費者としてのお金に対する我が家のルールが徹底されているからだ。

同じ結果が得られるのであれば、払うお金を最も少なく済ませるのが、賢い消費者であり、賢い投資家であると私は考えている。

私のMacフリークの友人に言わせると、Macはウィンドウズアップデート的なものがないからストレスフリーだとか、ウイルスを心配しなくていいとか、画面がきれいだとか、質感がいいとかいろんなことを言うが、私にはあまり響かない。
本稿の原稿料はウィンドウズPCで書いてもMacで書いても同じだし、書くスピードも変わらない。書く時間より考えたり調べたりしている時間のほうが圧倒的に長いからである。


こう考えると、「アップル製品でしかできないこと」はあるようでない。
細かいことを言えば、少し前に話題になったクラブハウスには当初アンドロイド版がなくiPhone利用者しかダウンロードできなかった。
このようにアップル製品でしか使えないアプリなど、なくはない。
でもスマホの目的をより大きく捉えれば、基本的にはない。

ちなみに、大手携帯電話会社の通信サービスについても、利益率が高すぎるのではないかと個人的には思う。
だから私は10年以上前に「月々の支払いは高く見えないが、長い目で見ると大金を払わされる」大手携帯電話会社が提供するサービスの利用をやめ、SIMフリー端末と格安SIMをそれぞれ個別に買っている。
中学生になった頃から持たせた子供たちのSIMと端末もそうしている。
大手キャリアでも格安SIMでも、結局、スマホから得られる結果は同じだからだ。


このように書くと筋金入りのアップル嫌いのようであるが、アップルの株は買う。
アップルに対しては尊敬の念しかない。iPhoneやMacには信者がいる。
使い心地、画面の美しさ、質感の良さなど、今や「アップルらしさ」とは何かについて、利用者のほうが深く理解しているのではないかと思う。
アップルのビジネスには、全ての経営者が実現したいと切望する要素が体現されている。

私にとってアップルは株を買う会社であって、製品やサービスを買う会社ではない。
機能だけを求める私のようなユーザーにとっては、高い車に乗っても安い車に乗っても、到着時間は一緒だからである。

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2021.10.28
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