ダニエル・トーマス、BBCニュース・ビジネス記者

イギリスの国家統計局(ONS)は17日、10月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比4.2%上昇し、過去10年で最も急激な伸びを記録したと発表した。燃料やエネルギー価格の高騰が主な原因だが、外食産業や中古車市場でも値上がりが見られた。

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イギリスでは新型コロナウイルスの感染対策の規制が解除されて以降、物価上昇が続いている。

10月のインフレ率は前月の3.1%から大きく加速したほか、中央銀行のイングランド銀行の目標値である2%を2倍以上、上回った。

イングランド銀行は、物価上昇に対応するために「今後数カ月」で政策金利を引き上げる可能性があると述べている。

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イギリスのインフレ率の推移。中央銀行のイングランド銀行は、2%を目標としている(出典:英国家統計局)

■何が値上がりしているのか

インフレ率に最も貢献したのは光熱費だった。エネルギー規制当局Ofgemは9月、家庭用ガスと電気料金の上限を撤廃。その結果、ガス料金は前年同月比で28.1%、電気料金は同18.8%値上がりした。

ガソリン価格は、世界的な原油価格の高騰を背景に2012年9月以来の高値となった。

また、半導体不足を受けた新車製造の減速により、中古車価格が今年4月と比べて27.4%上昇した。

このほか、外食・ホテル、運輸、衣料品、家庭用品、原材料といった分野でも値上がりしている。

広範囲にわたる物価上昇の背景には、政府によるパンデミック中の支援措置が終了したことや、パンデミックやブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)をうけた人材不足などがあるとみられている。

■世界的な要因

イングランド銀行のアンドリュー・ベイリー総裁は、11月初めに物価上昇について謝罪。インフレ率は5%まで上がる可能性があると注意を呼びかけた。

現在、多くのアナリストが、次回の金融政策委員会が開かれる12月にも、イングランド銀は利上げに踏み切るとみている。

イギリスの政策金利は現在、史上最低水準の0.1%。理論的には利上げによって消費が抑えられ、物価が下がることになる。

しかし、現在の物価上昇は原油価格の高騰といった世界的な要因が絡んでいるため、利上げの効果は薄いとみるアナリストもいる。

物価上昇は世界各国で起きており、アメリカも10月のインフレ率は6.2%と過去30年で最も加速。ユーロ圏では、2008年の金融危機以来で最高水準の4.1%を記録した。

2021年11月18日
https://www.bbc.com/japanese/59328686