新島さんの会社では、放デイと合わせて「児童発達支援」も行っている。児童発達支援とは、障害のある未就学児に対して、療育や発達支援を行う通所のサービスである。身体障害や知的障害のある未就学児が保護者と共に通い、日常生活を送るための知識や技能を身につけるための訓練を受けに行く場所である。

児童発達支援を利用する未就学児から、放デイを利用する小学生〜高校三年生まで、年齢も自立度も全く異なる子どもたちが集っていることになる。

■暴れている子の横で自慰行為

 【新島】「うちの施設では、一〇〇人の利用者のうち、半分以上がそういう子たちです。中でも強度行動障害の子どもは問題行為が激しい。自分の思った通りに行かないと暴れ出して、男性スタッフ三人がかりでもかなわない子もいます。暴れている子の横で自慰行為をしている子もいる。トイレが自立していない子もたくさんいるので、トイレに誘導したり、食事介助を行ったり……と、常にバタバタしています。

 子どもたちは日々成長していくので、半年に一回、個別支援計画を立てて、親御さんと面談を行い、アセスメント(課題の聞き取りと分析)をして、これからどのように支援していくかを協議します。計画を基に年間スケジュールを作るのですが、スケジュール通りに実施していくことは大変です。次々に問題が生まれてくる。

 職員も三〇名いるので、LINEワークスなどのツールや終礼などの場を使って、毎日お互いの持っている情報を集約・共有しています。トイレの自立度が上がった・下がった、これができたから次はこれ、といったように、毎日の情報共有の積み重ねがすごい大事です。

 ただ、利用者が一〇〇人いる中で、『今日は、この子がこういうことをやって困った』という報告を出すだけで精いっぱいになってしまうことも多いです。『では、そういう時はどうすればいいか』ということについて、具体的な提案や議論を行う時間がないことが悩みです」

■性的なトラブルを共有しやすくする関係づくり

 性の問題は、職員同士でも話しづらいが、保護者に対してはさらに話しづらい。保護者に対しては、どのように伝えているのだろうか。

 【新島】「児童発達支援管理責任者になって、保護者の方とのコミュニケーションが非常に大事であることを実感しています。日頃から連絡を取りあい、些細なこともすぐに報告する。そうしたつながりがあれば、性的なトラブルが起こっても、言いやすい関係をつくることができる。日頃からの関係づくりを心がけています。

 親の経済状況によって、子どもの気持ちの裕福度や性格は変わると思います。裕福な家庭の子どもは、カリカリしておらず、愛情を受けて育ったんだろうなと思わされることが多い。親にも相談がしやすい傾向があります。

 保護者同士のコミュニケーションの場としては、親の会などの横のつながりがあります。このネットワークはすごくて、あっという間に情報が知れ渡る。うちの施設や職員が保護者からどう思われていて、どんなことを言われているかといった情報も、逆にこのネットワークから入ってきたりします。下手なことを言ったりすると、保護者から直接デイを経営している会社にクレームがいく。

 ただ、こうした親同士のネットワークには、入れる人と、入れない人がいる。クレームや噂話以外に、本当に大切なこと、デイと保護者の間で話しあわないといけないことは、もっとたくさんあるはずなのに……と思う時もあります」

■外国籍の子どもの性問題はさらに解決が難しい

 新島さんの勤める放デイのある地域は、外国籍の住人も多く、その子どもたちも通っている。現在、利用者全体の約三割が外国籍の子どもだそうだ。裕福な家庭で育っている子どももいれば、シングルマザーや生活保護の家庭で育てられている子どももいる。

 言葉が異なると、本人や保護者とのコミュニケーションがうまく取れず、ただでさえ対応が難しい性に関するトラブルが、ますます解決困難になる場合もある。

 【新島】「両親がイスラム教の外国籍の女の子が、部屋の真ん中で自慰行為を始めるようになりました。日本人と比べても身体の発育が良いので、性的な面での成長も早かったのでしょう。職員が自慰行為を止めようとすると、とにかく暴れまくる。周りにいる他の子どもたちを殴ったり、ひっかいたりする。走り回ってあちこちの壁にぶつかっていき、へこませてしまう。
https://finance.yahoo.co.jp/news/detail/20211119-00051949-president-column