イギリスの調査会社ユーガブやアメリカのメディア・アクシオスの調査によると、
アメリカのミレニアル世代(1981年〜 96 年生まれ)、Z世代(1997年〜2012年生まれ)の4〜5割が「社会主義」という言葉に好意的だという。

(中略)
 瀬能 Z世代はデジタルネイティブで、SNSを駆使して仲間を募り、意見を積極的に発信する「アクティビスト世代」でもあります。
(中略)
 この人種的な多様性と彼らのリベラルさにはおそらく相関関係がある。もともと非白人の民主党支持率は高いわけですが、
かつてのように学校や生活が人種別に分かれていることは少なくなってきており、生まれたときから白人も黒人もヒスパニックもアジア系もいっしょに遊び、
学校に行くような環境が増えてきています。

したがって白人の若者に取材しても「自分たちからみても黒人は差別されている」とBLM(Black Lives Matter=黒人の命は大切だ)にも賛同する意見が多い。

(中略)

■アメリカの若者が支持する「民主社会主義」とは?

 ――アメリカの若者が支持する「社会主義」はわれわれがイメージする旧ソ連や中国、北朝鮮やキューバのそれとは違うそうですね。
民主主義を前提にして労働者が主役となる「民主社会主義」だと。

 瀬能 自称「社会主義者」の若者と議論すると、彼らのイメージにある社会主義とは「生産手段の国有化」「共産党の一党独裁」
あるいはマルクス・レーニン主義といったものではありません。

彼らには「格差が開き、気候変動に解決策を示せていない現代の資本主義は問題がある」という感覚があって、
それを是正するものとしての「社会主義」をクールだと言っている。
社会主義と言っても民主主義を犠牲にしたものはありえず、中国やキューバのようになってほしいとは思っていない。

 そもそもヨーロッパの多くの国や日本の政権と比べると、アメリカは民主党ですらかなり右寄り、再配分よりも市場経済重視なわけです。
それをもう少し左へ、つまり真ん中(中道)に戻したいというイメージと捉えればいいと思います。

 たとえばG7のなかで誰でも国が提供する医療サービス、国民皆保険の恩恵を受けられないのはアメリカだけです。
医療サービスには多額の費用が必要で、低所得者にはかなり厳しい。左派で人気の高いバーニー・サンダースやアレクサンドリア・オカシオ=コルテスが訴える
「メディケア・フォー・オール」はようするにヨーロッパや日本、カナダ並みの公的な医療制度にアメリカを近づけようという主張で、それが若者を中心に支持を集めている。

 2019年3月にハーバード大学ケネディスクール政治研究所が 18 歳〜 29 歳を対象に実施した世論調査の結果によると、
政府が提供する医療保険を通じてすべての国民が医療サービスを受けられる「国民皆保険」について
47%が賛成、「医療保険は全国民の権利で、支払い手段がないならば政府が負担すべきだ」については 52%が賛成しています。
(中略)

■Z世代は「年を取れば保守化していく」が当てはまらない?

 (中略)
――聞いていて「生活保守」ならぬ「生活左派」というか「生活リベラル」なんだなと思いました。頭で考えているというより、自分たちの生活感覚から出てきている気がします。
一方で日本では対照的に、若い世代ほど自民党支持が多いと言われていますよね。

 瀬能 イギリスでは野党の労働党が社会主義者といわれるコービンが党首だった時期があって、それを後押ししたのは10代〜20代前半の若者で、
彼らが熱狂的に格差是正策を支持していた。これは近年のアメリカと背景が似ていて、自分たちを苦しめる資本主義への異議申し立てだと思います。

 それと比べると日本の若い人たちは相対的に元気がないように映りますが……
これは私の知人の仮説ですけれども、日本の若者はイデオロギー的に保守化しているというより、皮膚感覚として負け組になりたくない、
主流派に軸足を置いていないと不安だという意識の方が強いのではないでしょうか。

――現状への不満や未来への不安は共通しているとしても、声をあげれば数の論理から言っても変えられると思えるアメリカの若者は主張をし、
日本では若者は年長世代にボリュームでは絶対負けるので戦わずに長いものに巻かれることを選ぶのかもしれないですね。

全文こちらで
https://news.yahoo.co.jp/articles/4ca87d078fbb7c7f8217d6cca1d46e840d966f24?page=1