ロシアのプーチン大統領は21日、国防省の会議で「西側諸国が攻撃的路線を続けるなら、軍事技術的な対抗措置を取る」と警告し、安全保障に関するロシアの提案を受け入れるよう欧米諸国に迫った。バイデン米大統領との会談で安保問題の協議を行うことが決まったが、露側は北大西洋条約機構(NATO)不拡大を求めるなど強硬姿勢を強めている。

 プーチン氏は会議で、冷戦終結後にNATOが中東欧諸国に拡大したことや米軍が「自国の領土から何千キロも離れたところで活動している」ことなどを非難。ロシアがウクライナ南部クリミアを強制的に編入し、欧米からの強い非難や制裁を呼んだことなどには触れず、「欧州の緊張は全て彼ら(欧米)のせいだ」と訴えた。

 プーチン氏は欧米諸国との間で「長期的な、法的拘束力のある(安全の)保障が必要だ」と改めて主張。「非友好的な措置には厳しく対抗する。我々はロシアの安全と主権を確保するために行動する完全な権利を持っている」と強調した。

 プーチン氏は7日にバイデン氏とオンライン会談した際に、NATOの不拡大などを含めた安全保障の文書の締結を要求。露外務省は15日に露側の要求をまとめた米露2国間の条約案やNATOとの協定案を米国に提示し、17日にはその内容を公表した。

 ただ、その内容はウクライナなど旧ソ連諸国へのNATOの不拡大を求めるだけでなく、すでにNATO加盟国となっているバルト三国を除く旧ソ連諸国と米国との軍事協力などの排除も求めている。米国に欧州への核兵器の配備をやめることや、NATOが東方へ拡大する前の1997年時点までNATOの部隊や兵器の配置を戻すことも要求した。事実上、中東欧諸国がソ連とNATOの間の緩衝地帯だった冷戦時代の力関係にまで戻すことを求めており、NATO加盟国からは反発が上がっている。

 交渉中の条約案などを公表することも外交上は異例の対応だ。ロシアは早期の交渉開始を繰り返し要求しているが、見返りにロシアが譲歩する内容も明らかになっていない。プーチン氏は21日の会議で「我々は政治的、外交的な問題の解決を望んでいる」と訴えたが、ロシアの提案は軍事行動に移る前の事実上の「最後通告」との指摘も出ており、ウクライナ国境周辺に集結するロシア軍の動向への懸念が高まっている。【前谷宏】

毎日新聞 2021/12/22 02:26(最終更新 12/22
https://mainichi.jp/articles/20211222/k00/00m/030/005000c