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原発は「低炭素への移行を加速」 欧州委が位置づけ方針発表

 欧州連合(EU)の行政を担う欧州委員会は1日、原発を地球温暖化対策に役立つエネルギー源だと位置づける方針を発表した。温室効果ガスの排出を2050年に実質ゼロにする目標の実現に向けて投資を呼び込みやすくする。原発の活用についてはEU内で意見が割れているが、再生可能エネルギー社会に移行する過程で「果たすべき役割がある」とした。

EUは、発電、交通、建築など様々な経済活動ごとに、持続可能で環境に配慮しているかどうかを仕分けするルール「EUタクソノミー(分類)」を設けている。風力や太陽光などを列挙した発電分野に原発の項目を追加し、投資家や企業、政府当局が共通して使える技術面での評価基準を示す方向だ。1月中に正式決定するという。

 欧州委はEUタクソノミーを「グリーンリスト」と呼んでおり、基準に合致すれば好条件で資金を調達しやすくなる。
 原発は発電時にCO2を排出しない半面、放射性廃棄物の問題や事故への懸念から加盟国間で意見が割れて判断が持ち越されていた。欧州委は国ごとにエネルギー政策が異なることを踏まえつつも、原発をタクソノミーに組み込めば「石炭のような環境に悪いエネルギー源を離れ、より低炭素なエネルギーの組み合わせへの移行を加速できる」と説明した。

 EU内には13カ国に100基余りの原発がある。90年代の33%前後から減少傾向にあるとはいえ、発電量全体の26%をまかなっている(19年)。欧州委のフォンデアライエン委員長は、再エネへの注力を繰り返し強調する一方で、「安定したエネルギー源として原発が必要だ」としていた。また、ロシアを含む資源国への依存を低減させる、エネルギー安全保障の面からも原発を推す声が出ていた。(ブリュッセル=青田秀樹)

ブリュッセル=青田秀樹
2022/1/2 2:20
朝日新聞