時計2022/2/18 05:30神戸新聞NEXT

 高齢女性に声をかけて特殊詐欺被害を未然に防いだとして、兵庫県警西宮署はファミリーマート西宮上ケ原店のアルバイト獺越南奈(おそごえ・なな)さん(24)に署長感謝状を贈った。気付いたきっかけは女性が電子マネーを購入しようとした時、店にかかってきた不審電話だった。(浮田志保)

 昨年12月4日午後2時半ごろ、レジで対応をしていると70代の女性が来店した。特に慌てている様子もなく「20万円分の電子マネーを買いたい」と言う。

 −買い慣れているのかな−。獺越さんは最初、そんなふうに感じた。

 ほぼ同時刻、別の店員が電話を取る。聞くと店へのクレームだ。嫌な予感がして女性に待ってもらい、店員から受話器を引き取ると電話越しに言われた。

 「スパゲティを(そちらの店で)買ったけれどスプーンが付いていなかった」

 変な苦情だと思った。「スパゲティにフォークでなくて、スプーンですか?」と聞き返すと「箸もフォークも付いていない。スプーンさえあれば食べることができた」と要領を得ない。

 ふと、店長が従業員に注意を呼び掛けていたことを思い出した。

 「詐欺グループはコンビニを使ってターゲットに電子マネーを買わせたり、還付金名目で送金をさせたりする際、店員の注意をそらせるために変な電話を入れてくることがあるらしい」

 獺越さんはそんな事例が別の店で実際にあったことも知っており、電話越しの声の後ろが妙に騒がしいことも不審に思った。

 気になって電話のやりとりを打ち切り、高齢女性の元に戻って「電子マネーを何に使うつもりですか?」と尋ねると「自分で使うお金だから大丈夫よ。ありがとう」とはぐらかされた。それでも粘り強く、なぜ買うことになったのかを聞くと「NTTから携帯のお金が払えていないとメールが来た」と打ち明けられた。

 −これは詐欺だ−。確信すると、女性が来店して20分ほど過ぎた午後2時50分ごろ、「詐欺かもしれません」と110番し、被害の未然防止に貢献した。

 西宮署によると、こうした電話は2年前ごろからたびたび確認されるようになったといい、昨年2月には県警が啓発のチラシを作り、コンビニにも注意を呼び掛けていた。

 獺越さんは「高齢の人に電子マネーは難しいかもしれない。被害に遭いそうな時、助けられるのは私たち若い世代。悲しむ人が減るように、今後も気を付けていきたい」と話した。

https://www.kobe-np.co.jp/news/hanshin/202202/0015071875.shtml