ロシアによるウクライナ侵攻が続いている。明確な国際法違反であり、断じて許されない。われわれが築き上げてきた国際秩序への深刻な挑戦でもある。
私は前回コラム(2月18日発行)で、「外交的解決の道を」と訴えたが、ウラジーミル・プーチン大統領には通じなかった。極めて残念だ。

紛争や戦争が勃発する原因は、主に2つある。「敵対国同士の軍事バランスが崩れること」と、「敵対国が、相手国の意思や能力を見誤り、自己を過信すること」だ。

ウクライナには同盟国がなく、軍事力ではロシアが圧倒していた。ウクライナやNATO(北大西洋条約機構)も当初、「ロシアが全面侵攻するはずがない」と思っていた。
ロシアとしても、ウクライナがこれほど抵抗するとは思っていなかっただろう。

今回の教訓は多い。

まず、同盟国ではない国のために戦ってくれる国は存在しないという、国際社会の冷徹な現実である。
日本は「自分の国は自分で守る」という基本を踏まえ、安全保障の基軸である日米同盟を強化・維持するために、信頼関係を深める努力を続けなければならない。

さらに、日本と米国、オーストラリア、インドによる戦略的枠組み「QUAD(クアッド)」の安全保障面での強化を図り、
「自由で開かれたインド太平洋」に賛同してくれる国々との連携を進めることも重要だ。

プーチン氏が、核兵器による恫喝(どうかつ)を行ったことを受け、世界の政治家は、国民の生命と財産、国家の独立を守るために、
自国の「核抑止」について見直すことが迫られた。日本の周囲には、ロシアや中国、北朝鮮という核保有国が存在している。

私は先月末、フジテレビ系「日曜報道 THE PRIME」で、「日本は核拡散防止条約(NPT)の加盟国であり、
『非核三原則』(=核兵器を『持たず、作らず、持ち込ませず』)があるが、世界ではどのように安全が守られているかという現実について議論していくことをタブー視してはならない」と問題提起した。

そのうえで、NATO(北大西洋条約機構)が採用している「ニュークリア・シェアリング(核共有)」について説明した。
これは、ロシアの「核の脅威」に対抗するため、非核保有国であるドイツとイタリア、オランダ、ベルギー、トルコに米国の核兵器を配備することで、「核抑止力を共有する政策」である。

日本は現在、米国が核抑止力の対象を同盟国に広げる「拡大核抑止(核の傘)」の中にいる。
ただ、ウクライナ侵攻で示されたように、「敵対国が相手国の意思や能力を見誤る」ことはあり得る。

もし、「実は、核の傘は機能しないのではないか?」と思えば、わが国の核抑止力は低下する。

政府には「非核三原則」に関する答弁との整合性がある。ここは与野党が率先して、
「わが国に核兵器を撃ち込ませない」ために、さまざまな選択肢を視野に入れて議論しなければならない。

ところが、一部の野党やメディアは、「こんな議論を絶対に許すわけにはいかない」(共産党の志位和夫委員長)、
「議論だけはいいなんていうのは詭弁(きべん)」(立憲民主党の泉健太代表)、「戦争被爆国としての自覚と責務がみじんも感じられない」(朝日新聞、1日社説)などと、
いつものように反発してきた。

議論もさせないとは、「世界の危機」「日本の危機」を前にして、思考停止に陥っていると言わざるを得ない。

社会民主党と緑の党の連立政権であるドイツですら、国防費の大幅増を決断した。
これでは、非核三原則に「言わせず、考えさせず」を加えた「非核五原則」ではないか。

ただ、彼らの批判はそれほど支持を得ていないように感じる。

北朝鮮がミサイル発射と核実験を強行した2006年、当時の中川昭一・自民党政調会長が
「核抑止の議論」を提起した際は、左派勢力を中心に猛烈な批判が起こった。

ただ、今回は自民党の茂木敏充幹事長や高市早苗政調会長らだけでなく、日本維新の会も「議論すべきだ」と主張している。
世界の厳しい現実を見て、賢明な政治家や国民は目を覚ましたのではないか。 (自民党衆院議員)
https://www.zakzak.co.jp/article/20220312-YMMSKCDYCNNVFJJAM5GSBRDRQY/