? ロシアとの平和条約交渉に向けた経済協力費として、政府が2016年度から6年間で予算計上した計約265億円のうち、200億円程度を支出していたことが関係者への取材で分かった。一方、21日、ロシア外務省は日本との平和条約締結交渉の停止を発表。22日に成立した22年度当初予算にも21億円の関連経費が入ったままだが、一部事業では予算の執行が見送られる方向だ。(皆川剛、原田晋也、藤川大樹、桐山純平)

 ロシアとの経済協力は16年5月の首脳会談で、当時の安倍晋三首相がロシアの産業振興などから成る「8項目プラン」としてプーチン大統領に提示して加速した。各事業を所管する省庁や政府関係者への取材から、16年度以降の支出額は約200億円に上ることが判明した。
 個別のロシア関連事業では、外務省がロシア6都市に設けた非営利法人を通じた訪日研修に計30億円、北方4島の住民の日本招致に計13億円を支出。厚生労働省は所管する予防医療分野の医師らの交流に計29億円を費やした。ロシアのウクライナ侵攻を受け、経済官庁幹部は「これまでの支出は無駄だった」と話す。
 22年度予算に盛り込まれた関連経費21億円を巡っては、政府は「日本企業を支援する予算も含まれている」(岸田文雄首相)として、野党の修正に応じず予算の削減をしなかった。ただ、外務省や国土交通省、厚労省などは「進められる状況ではない」などとして、事業の枠組みを残したまま、予算の執行を取りやめる。
 一方、文部科学省は原子力発電所の廃炉に関する共同研究の予算について、「政府の方針にもよるが、(日本側の資金は)国内の研究機関に提供するもので停止しない方向だ」として継続する。総務省は自治体間交流について「当面は執行が難しい」としながらも「来年度全てにわたりやめる判断はできない」とする。
 今後のロシアとの経済協力について、首相は22日、記者団の取材に「エネルギーなど日本が確保している権益は大事にしていかなければならない。関係をどのように続けていくのか国益の観点から冷静に判断することが重要だ」と話した。

東京新聞 2022年3月23日 06時00分
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