新型コロナウイルスのオミクロン株の感染者が減少傾向にある中、軽症や無症状だった患者の深刻な後遺症が尾を引いている。
せきや倦怠(けんたい)感などがしばらく続くとの訴えは後を絶たず、寝たきりに近い状態となるケースも報告される。

従来株より短期間で症状悪化に至る特徴もみられ、診療現場は大きな危機感を抱えている。

埼玉県の50代女性は2月上旬、せきと喉の痛みが現れ、コロナ陽性と判明した。
次第に後頭部や首、背中や肋骨(ろっこつ)下部にも鈍い痛みを感じるようになり、
起き上がるのもつらく、痛み止めと市販の風邪薬を飲んでやり過ごした。

10日間の自宅療養後に職場復帰を果たしたものの、発症から1カ月が過ぎてもせきが続き、
肩から背中にかけて筋肉痛のような痛みも消えない。仕事が忙しくなると、せきやたんの出る量が増えたことも気にかかる。

意識的に睡眠時間を確保するなど体調管理に努めているが、不調はなかなか改善されない。
知人の中にも感染後、「だるくて仕方がない」「食欲がない」と話す人もいる。

「以前の体の状態に戻ることはできるのか」。女性は不安を拭いきれない。

コロナの後遺症外来を開く「ヒラハタクリニック」(東京都渋谷区)では第6波のピークを過ぎた2月下旬ごろから外来患者が増え始め、
多い日で100人近くを診る。オンラインを含め午前中から翌朝まで対応しても、数十人は診察を断らざるを得ない日が続いている。

患者の中心は30代で、10代や10歳以下の子供もいる。
オミクロン株感染の影響とみられる患者約130人を分析した結果、約8〜9割が「倦怠感」「思考力の低下」「気分の落ち込み」「頭痛」があると回答。
「せき」(約7割)の症状では、ぜんそくのような状態の患者も多い。

最も深刻といえるのは週の半分以上を横になって過ごす「寝たきりに近い状態」や「寝たきりとなった」患者で、
49人(1月1日〜今月6日)に上る。発症から24日程度(分析患者の中央値)でこの状態まで陥り、症状悪化のスピードは従来株より2週間ほど速いという。

平畑光一院長は「療養期間が明け、仕事や勉強の遅れを取り戻そうと無理をして頑張ってしまうと一気に悪化することがある」と説明。
オミクロン株は感染しても重症化しにくいとされるが、「感染者が多い分、後遺症になる人も増える恐れがある」と懸念する。

後遺症は根本的な治療法が確立されておらず、対症療法が中心となる。
寝たきりに近い状態となれば、療養が長期間に及ぶこともあり、働けなくなったり、学校に行けなくなったりする患者も多くいる状況だ。

「オミクロン株に感染して軽症や無症状で済んでも、日常が奪われかねない後遺症の恐れがある。
後遺症で体がつらいのに周囲の理解が得られず、苦しい思いを抱えている人も大勢いる。感染防御の手を決して緩めないでほしい」。平畑氏はそう訴えている。
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