新型コロナウイルスワクチンの集団接種会場で打ち手を担う看護師と比べ、国の特例措置で接種を認められた歯科医師の賃金(時給)が
最大で約16倍高いことが、宇部フロンティア大(山口県宇部市)の三隅達也助教(医療経営学)の調査で分かった。

歯科医師にも接種を任せている全国22自治体に情報公開請求した。

三隅助教は「同じ内容の仕事であり、同一賃金に近づけるべきだ。歯科医師という資格に過剰な税金を使うのは納得が得られるだろうか」と問題提起している。

ワクチンの筋肉注射は本来、医師や看護師の資格が必要で、歯科医師が担うと医師法違反となる。
厚生労働省は昨年4月、自治体による集団接種会場が増えると打ち手不足になる恐れがあるとして「看護師の確保ができない」場合などに歯科医師による接種を容認した。

集団接種では一般的に医師が予診、看護師らが接種を担当。接種の本格化に伴い、歯科医師も接種に加わった。
三隅助教は昨年4月から約半年かけて、神戸市や福島市など22自治体の賃金実態を調べた。

その結果、半数が歯科医師の時給を医師と同額に設定。長野県飯山市では、歯科医師の時給1万8000円に対し、
市が直接雇用した看護師は1130円(市が業務委託した医師会が雇用した場合は5000円相当)と15・9倍の差があり、格差が最大となった。

市は看護師の時給が低い理由を「(別のワクチン接種などで雇用する)看護師の時給が既に設定されており、それを変えなかった」としている。

九州では福岡、北九州両市を調査。福岡市は医師と同じ1万2500円で看護師の5倍だった。
昨年5月末から歯科医師が応援に入り、同8月末で終えた。ピーク時で打ち手の2割を歯科医師が占めたという。

同市は「当時は緊急的に人材が必要で、平均月収などから考えて医師と同額にした」と説明する。

北九州市では昨年7月から歯科医師が接種しているが、時給額は「関係者の利害に影響がある」などとして不開示だった。

三隅助教は医師と看護師の間の賃金格差も踏まえた上で「ある程度高い賃金を設定すれば、看護師を確保できた可能性がある。
本当に『看護師が確保できない状況』と言えたのかどうか、冷静に分析する必要がある」と指摘している。
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