「比較的重症化はしにくい」――などと言われていた新型コロナのオミクロン株だが、後遺症に苦しむ人が増えている。

コロナ発症後、症状が軽くても、後遺症に苦しむ人も珍しくない。そうした中でいま注意が向けられているのが、“倦怠感”だ。

専門家によると、「病後、疲れているけど、体力を戻すために散歩を」などと身体を動かすと危険だという。
厚労省から適切な対応が十分に周知されていないという指摘も出ている。

「患者さんが殺到して、パンク状態が続いています」
こういうのは、新型コロナウイルスの後遺症外来を行うヒラハタクリニック(東京都渋谷区)の平畑光一院長だ。

取材した14日は休診日だったが、朝4時まで診察をしていた。病院でもオンラインでも診察を行っているが、「何十件もお断りしている状況」という。

コロナ後遺症は感染者の10〜30%が罹患するとされている。東京都が12日に公表した資料によると
都立病院・公社病院におけるコロナ後遺症相談窓口の相談件数は、3月で914件と、前月の627件から大幅に増加した。

第5波に襲われた昨年9月の1165件に次いで2番目の多さとなっている。

クリニックの後遺症外来に訪れる患者の年齢を見ると、30歳代が28%で最多、20歳代と40歳代が25%、
19歳以下と50歳代が9%、60歳以上が4%となっている。性別では女性が64%、男性が36%となっている。

後遺症の中でもいま注視されているのが、倦怠感だ。平畑院長は「倦怠感を訴える患者が後遺症を悪化させていることが多い」と警鐘を鳴らす。

多くの人に共通して見られるのが、PEMと呼ばれる症状だ。

PEMとは、Post−exertional malaiseの略語で、「運動後(労作後)倦怠感」とも訳される。
症状は、買い物や散歩など身体への負荷がかかる軽い活動をした5時間から48時間後に、急激に強い倦怠感が出るというものだ。

口喧嘩などの心的なストレスが加わったあとでも同様の症状が出ることがある。クリニックの後遺症外来にくる4割の人が、このPEMと見られるという。

「PEMがある時は身体にかかる負荷を減らし倦怠感を出さないようにすることが必須です。コロナ罹患後の2カ月は安静にしている必要があると見ています。
しかし、当院に来られる患者では、30代、40代といった働き盛りの人が多く、少し身体がだるくても、『休んで遅れた分を取り戻そう』とか
『周りに怠けていると思われたくない』と考えて、頑張ってしまう。その結果、寝たきりや、準寝たきりにまで悪化してしまう人が多くなっている。
一気に寝たきりにまで悪化するのが特徴の一つです」(平畑院長)

PEMの症状を繰り返す患者は、ME/CFSという病気につながる可能性がある。ME/CFSは筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群と呼ばれる病気だ。
激しい全身倦怠感に襲われ、仕事や学校に行けなくなる。思考力や集中力が低下し、ブレインフォグ(脳にかかる霧)と呼ばれる症状が出る。

下痢や立ちくらみなど自律神経系の症状もあり、多岐にわたる。このような症状が6カ月以上続くとME/CFSと診断される。
国立精神・神経医療研究センター神経研究所免疫研究部の山村隆部長は、ME/CFSについてこう説明する。

「現代に残されたいまだに解明されていない難病の一つです。かつては検査をしても原因がわからず、医師に『様子を見ましょう』と対応されたり、
詐病じゃないかと疑われたり、精神的なものとして精神科を紹介されたりと、間違った対応が繰り返されてきた。

コロナの感染が始まってからは感染がきっかけとなってME/CFSとなったと見られる患者が多数出てきている状況です。
この病気は免疫反応によって起きている可能性があり、お年寄りよりも30代、40代といった若い世代で発症しやすい病気と見られています」
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