水産庁は23日、北海道沖でのサケとマスの漁獲量などを決める日本とロシアの漁業交渉が妥結したと発表した。日本の漁業者がロシア側に支払う協力金の見込み額は昨年よりも下限を6000万円引き下げ、漁獲量は同水準を維持した。日本がロシアへの制裁を強めるなかでの異例の交渉が決着した。

11日から22日深夜までオンラインで協議した。25日に予定している署名を経て正式に妥結する。国内での必要な手続きや漁業者の準備を経て、5月初旬には出漁できようになる。例年よりも3週間ほど遅れ、操業可能な期間が短くなる。

例年は4月10日に解禁しているが、今年はロシアによるウクライナ侵攻の影響で、漁獲量などの操業条件を決める交渉の開始が遅れた。例年は数日で終わっていた交渉期間も長引いた。水産庁の担当者は「日本側の漁業者の漁獲量が低迷していたため、漁業協力金の引き下げで粘り強く交渉した」と説明した。

協力金の見込み額は2億〜3億13万円となり、漁獲可能量の上限は昨年と同様の2050トンに決まった。昨年の漁獲実績は約650トンで、実際に支払ったのは2億6000万円だった。

協力金の支払いはロシアの外貨取得につながるとの指摘も出ていた。水産庁の担当者は「資源の保存管理の協力の一環で支払うもので、問題があるとは考えていない」と述べた。ロシア側に支払われる協力金は研究費などに使われるため、軍事費などに投じられる恐れはないという。

22日までの協議では日本水域での漁獲について合意した。ロシア水域の交渉に関しては、漁が最も盛んになる6月に向けて引き続き日程を調整しているという。

日本経済新聞 2022年4月23日 1:30 (2022年4月23日 8:55更新)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA22EFE0S2A420C2000000/