「家庭科にもっと時間をくださいという感じ」。都立国際高校の岩澤未奈・家庭科主任教諭はこう本音を漏らす。

 文部科学省の学習指導要領の改定に伴い、4月から高校の家庭科の授業で資産形成の教育がスタートした。
昨年度までは、①日常生活の収入と支出のバランスなどについて理解を深める家計管理、②売買やサービスの「契約」という考え方を学ぶ消費者問題、などの教育に重きが置かれていた。
後者ではクーリング・オフ制度や悪質商法などの説明に多くの時間を割く高校も少なくない。

■生きていく力を身につける

 新年度以降は「生涯を見据えた収支計画を立てる」との観点から預貯金だけでなく、株式、債券、投資信託などの特徴にも触れることになった。

 筆者のような世代だと、家庭科といえば調理実習や裁縫というイメージが真っ先に浮かぶかもしれないが、そうした発想は古すぎる。
「生きていく力を身につけるための科目」であり、現在はカバーする領域が広範に及ぶ。
実際、都立国際高校の年間授業計画を見ると、衣食住だけでなく保育、高齢者問題、家庭経済などの項目も含まれている。

 家庭科では金融教育も従来から行われてきた。若年層が金融教育を受ける場の整備などをしようと、2月に始動した日本金融教育推進協会の横川楓・代表理事によると、
「2005年が金融教育元年」。横川氏は「クレジットカードについては学んだが、社会での使われ方やほかのキャッシュレス決済の手段などは習わなかった。
若い世代に今、必要なのは1から100までおカネの知識や仕組みを体系的に学ぶこと」と高校時代の家庭科の授業を振り返る。

 だが、家庭科の授業だけで対応するにはいささか時間が足りない。
高校では「家庭基礎」(年間週2コマ)あるいは「家庭総合」(同週4コマ、ただし3コマでも可)のいずれかを履修する。
多くの高校はこのうち、「家庭基礎」を選択。わずか週2コマの授業にもかかわらず資産形成が加わったとなれば、教育現場の負担が膨らんだのは想像に難くない。

 都立国際高校の岩澤教諭はこれまでも金融教育に対して積極的に取り組んできた。
金融や財政の仕組みを教える公民(新年度から「公共」)の教諭と連携した授業などの新たな試みにも挑戦。
リスク商品のメリットやデメリットについてもすでに授業で触れてきたという。

■授業では株価見通しについても触れる

 「投資にもさまざまなやり方があり、必ず儲かるとはかぎらない」「リスクをおそれて何にも投資せず、自分の資産を貯金するよりも、将来や社会貢献など(を見据えて)長期的に運用していくことも大事」
「信用できる情報源から判断し、おカネとうまく向き合うことが消費生活には必要不可欠になる」……。同教諭の授業を受けた生徒の投資などに関する意見だ。

 同教諭は「もう一歩進んで、株価は半年前に比べれば上昇しているから長期的に考えたほうがいい。
あるいは一度に多くのおカネを注ぎ込まないほうがいいなどとシミュレーションしながらイメージできるように学習できればと考えている」と新年度からの授業に意欲を見せる。

(以下略、全文はソースにて)
https://finance.yahoo.co.jp/news/detail/20220528-00592417-toyo-column