岸田首相 電気料金上昇は「欧州の3分の2程度」 物価高騰「重く受け止める」も、円安原因の日銀金融緩和は「維持期待」

 岸田文雄首相は15日、通常国会の閉会を受けた記者会見で、国民生活を直撃している物価高騰について、「事態を重く受け止め、対策を講じていかなければいけない」と強調した。首相は「賃上げと投資を進めることで今の物価高騰に結果を出していく」と物価上昇を上回る賃上げと投資の促進に重点を置く考えを示したが、物価高騰対策としての即効性は見通せない。(山口哲人)
 首相が会見で打ち出した新たな物価高騰対策は、政府が製粉会社に売り渡す輸入小麦の価格抑制策を条件付きで10月以降も継続することや、電気料金の上昇を抑え電力の安定供給のために原発再稼働を進めることなど。小麦価格や電気料金以外に関する具体的な物価高騰対策は、政府内に「物価・賃金・生活総合対策本部」を今後発足させ検討を進める。
 一方、首相が物価対策として触れた賃上げは、既に政府が取り組んでいる。首相は会見で「継続的な賃上げを可能にするよう『新しい資本主義』を実現させる」と訴えたものの、「新しい資本主義」で当初掲げた分配重視の政策は影を潜めている。投資に関しても、「資産所得倍増プラン」をこの日も強調したが、低所得者層は貯蓄が少なく、投資に回す余裕がないとの指摘がある。

 また、首相は日本の物価の上昇率が海外よりも低いと強調した。
 ロシア産の発電用燃料への依存度が高い欧州では電気料金が3割から5割値上がりしていると指摘。「わが国の上昇幅は欧州の3分の2程度に抑えている」と訴えた。4月に打ち出した総合緊急対策の効果により、レギュラーガソリンの全国平均価格が本来1リットル210円に上がっていたところを170円程度に抑えていると指摘。前年同時期より1リットル20円ほど高い水準で推移しているが、「ウクライナ侵略後の値上がり幅は、欧米各国の半分程度だ」と主張した。
 円安の起点となっている金融緩和を修正する必要があるか問われた首相は、前年比2%の物価上昇率を目指す日銀の金融政策について「持続的、安定的に維持する努力を続けることを期待している」と追認する考えを示した。

東京新聞 2022年6月15日 22時21分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/183599