「網戸開けて入った」「大根持って歩く」 猿やりたい放題29人けが

 山口市小郡地域で住民が猿にかまれるなどの被害が相次いでいる。21日から22日午前にかけて6歳~70代の男女計5人が負傷しており、被害が始まった8日以降、けが人は22日現在で計29人に上る。山口県、市、県警などは同日、県庁で対策会議を開き、市は市街地での麻酔銃使用で猿を捕獲する方針を示した。住民からは事態の早期収束を願う声が上がる。【山本泰久、堀菜菜子、福原英信】

 対策会議には県自然保護課、山口市農業政策課、県警本部生活安全企画課、山口南署などの担当者ら11人が参加。けが人はいずれも軽傷。当初は幼児が狙われたが、その後は40代男性まで襲うようになり、17日には最多の8人が被害に遭った。

 同市小郡新町では同日午前8時前、猿が民家の網戸を開けて屋内に侵入し、3歳と5歳の男児2人の手足にかみついたり引っかいたりした。当時、2階にいた父親は取材に「1階から泣き声がして急いで向かうと、猿が子供に覆いかぶさっていた。早く子供たちがのびのびと外で遊べるようになってほしい」とため息をついた。近隣住民からも「明け方に窓をバンバンとたたく音がして、見たら猿だった」「大根を持って歩いていた」などの目撃情報が相次いだ。市は公用車を巡回させて戸締まりを呼び掛ける他、猿が逃げる際に通過する川沿いの道に職員を配置して警戒に当たっている。

 山口南署には猿の目撃情報が109件寄せられている。市では「目撃情報では40~50センチや70センチというものもあり、体色の違いもあるので猿は単独ではなく、複数いるのかもしれない」という。

 また、猿は餌に執着しておらず、わなにかからないといい、県の担当者は取材に「室内に侵入しても食べ物を探した形跡がなく、人を襲って、その反応を楽しんでいるような節がある」。市の担当者は「これまでにも猿被害はあったが、ここまで長引いたことはなかった、一刻も早く収束させたい」と話した。

 県立山口博物館の田中浩学芸員(動物担当)は「ニホンザルは本来、群れで生活し、人を襲うことはほとんどなく、あまりみない事例。群れから離れた場合、通常は他の群れに合流するが、群れを見つけられず、パニックになっているのではないか」と説明。その上で「確実な戸締まりと猿の出没情報の共有をしてほしい。猿がいたら近づかないことが大切だ」と注意を呼び掛けた。

猿によるけが人(22日現在)
8日 1人 小郡新町
9日 1人 〃
11日 1人 小郡みらい町
14日 1人 小郡下郷
15日 4人 小郡新町
17日 8人 小郡新町、小郡尾崎町、小郡下郷
18日 1人 小郡新町
19日 1人 小郡みらい町
20日 6人 小郡新町、小郡みらい町
21日 4人 小郡尾崎町、小郡新町、小郡円座西町
22日 1人 小郡尾崎町

毎日新聞 2022/7/23 09:00(最終更新 7/23 09:00) 1137文字
https://mainichi.jp/articles/20220723/k00/00m/040/030000c
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