自民党は26日、参院選中に銃撃され死亡した安倍晋三元首相の追悼演説を、8月3日召集の臨時国会で同党の甘利明前幹事長が行う方向で調整に入った。自民党の首相経験者に対する追悼演説はこれまで野党が行うことが慣例だった。野党は国葬開催の是非などを審議するため十分な会期を求めているが、与党は8月3~5日の3日間とする方針。野党は反発しており、甘利氏の人選も新たな対立の火種になりそうだ。
政府は26日、衆参両院の議院運営委員会理事会で、臨時国会を8月3日に召集すると伝達。これに先立ち、自民党の高木毅国対委員長は立憲民主党の馬淵澄夫国対委員長と国会内で会談し、会期を3日間とする考えを示した。
高木氏は追悼演説を同5日に行うことも提案したが、馬淵氏は「国葬の是非も含めて政府の説明責任が果たされていない状況で行うのは筋として通らない」と反発。馬淵氏は会期3日間についても「到底認められない」として、両氏は折り合わなかった。
追悼演説を行う方向で調整している甘利氏は、経済再生担当相などとして安倍政権を支えた。安倍、麻生太郎両氏とともに「3A」と称され盟友関係を築いた。今回の人選は「遺族の意向」(自民党幹部)という。
ただ、2000年の小渕恵三氏への追悼演説は社民党の村山富市元首相が、1980年の大平正芳氏の場合も飛鳥田一雄・社会党委員長が行ってきた。
このため、野党からは「自民党のお手盛りが過ぎる」「何を聞いても自民党は『遺族の意向だ』としか説明しない」(立民幹部)といった不満が出ている。
これに関して、立民の西村智奈美幹事長は党本部で記者団に「追悼演説の慣例からも極めて逸脱する」と指摘。その上で「政治とカネをめぐる問題の甘利氏ならば、何重もの意味で故人の弔い方としてはよくないことだ」と批判し、自民党に再考を求めた。

時事ドットコムニュース
2022年07月26日19時24分
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