加速するクレカで“タッチ乗車” 公共交通の「オープンループ」を理解する
鈴木 淳也/Junya Suzuki2022年8月5日 14:52

クレカの“タッチ”で公共交通を利用する「オープンループ」の認知が少しずつ広まりつつある。8月2日には三井住友カードが提供する「stera transit」に関する説明会が、日本全国の鉄道事業者を集める形で開催されたが、日本国内だけでも実証実験合わせて20の事業者によるオープンループのプロジェクトが進められており、世界で580あるというプロジェクトの勢いに合わせる形で拡大が進んでいる。

(中略)

疑問その2:Suicaの処理速度でないと日本のラッシュは捌けない?
日本国内では「Suicaの処理速度でないと日本のラッシュは……」という意見が非常に多い。これは事実だろう。例えば、TfLが規定するオープンループの最大処理時間が500ミリ秒(クローズドループ時は250ミリ秒)なのに対し、Suicaは200ミリ秒となっている。QUADRACが提供する日本国内でのオープンループの処理時間の目安が300ミリ秒以内となっており、TfLよりは高速だが、Suicaよりは50%ほど最大処理時間が長い。

ただ、この数字は以前にも解説したように、Suicaの改札機自体が非接触通信での反応距離が他のサービスの2倍以上と広く、処理時間をさらに短くする工夫が行なわれている点に注意したい。オープンループではこうした“トリック”がEMVCoの規定上利用できないため、Suica改札機との差は埋めがたい。

ゆえに、疑問1の項目でも触れたが、既存の交通系ICカードに対応した改札機をそのままオープンループでリプレイスするのは賢い方法とはいえず、両者を共存させる、あるいはオープンループのみ専用改札で隔離するといった手段が必要になる。すでに安定して動いているものを、わざわざリスクを犯して不便を甘受せずともいい。オープンループはあくまで既存のサービスでは賄えないニーズを取り込むための手段として付加的に用いるのが賢いと考える。

https://www.watch.impress.co.jp/docs/series/suzukij/1430443.html