文部科学省は、デジタルや脱炭素分野などに関わる理工系学部の新設や拡充を促すため、学部再編に取り組む大学を財政支援する方針を固めた。
両分野は今後成長が見込める一方、専門人材が不足するためだ。他の主要国に比べて低い理系学生の割合の拡大も図る。
来年度にも基金を創設し、新たな支援制度を始める考えだ。

 創設するのは「大学等機能強化支援基金(仮称)」。
独立行政法人「大学改革支援・学位授与機構」に設ける見通しで、秋に予定する臨時国会に関連法案を提出する方針だ。
支援対象は私立・公立大を念頭に置いている。

 政府は、日本経済の再生と国際競争力の強化のためにはデジタル分野の高度IT人材や、
地球温暖化対策のための脱炭素に関する専門人材の拡充が不可欠だとみている。
こうした分野を中心に理・工・農学の学部を新設したり定員を増やしたりする大学に、初期投資や当面の運営経費を補助する。
補助金額や割合は検討中だが、基金は複数年で2000億円規模を確保したい考えだ。

 学部数や大学定員の増加を防ぐため、他分野の定員減などと合わせた「スクラップ・アンド・ビルド」を原則とし、
大学内全体の定員増となる場合は補助率を下げる方向で検討している。

 国立大学に対しては、特に人手が不足する情報科学分野の学部強化については例外的に定員増を認め、財政的支援も進める方向だ。

 大学と同様に理系人材育成を期待される高等専門学校(高専)に対しても、資金面で支援する。
高専のない地域で専門高校を高専に転換することなどを想定し、設備投資を後押しする。

 文科省が2021年にまとめた統計では、主要国の学部の学位取得者に占める理系割合は
英国が45%、韓国とドイツは42%、米国は38%に上るのに対し、日本は35%にとどまっている。

 政府の教育未来創造会議(議長・岸田首相)は今年5月、理系学生の割合を5割程度に引き上げる目標を掲げた。
今後10年程度を集中改革期間と位置づけている。

 文科省によると、国内の大学の学部卒業者(20年度末)の分野別割合は、法学・経済学などの社会科学が33%、人文科学が14%なのに対し、
理系の工学は15%、理学は3%、農学が3%、医・歯・薬学部など医療系が11%となっている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/8570ee89d16ef762ea7c21fc59adc743b7b79b7b