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パンデミック宣言から2年、科学者の予想を裏切り続けた新型コロナ、進化は今も」
日経ナショナル ジオグラフィック

長引く感染、1年近く続いた例も
 突然変異の数が飛躍的に増えた理由としてとくに有力なものに、新型コロナウイルスは、免疫系がそこなわれた人々の体内で長期間進化できたという説がある。

 過去1年の間に、科学者たちは、新型コロナウイルスへの感染が数カ月から1年近くにわたって続いた、がん患者およびHIVの患者を確認している。こうした患者は免疫系が抑制されているため、ウイルスは長期間そこにとどまり、複製と変異を繰り返せた。

 グプタ氏は、101日間感染が続いたがん患者のサンプルから、そうした変異のひとつ(アルファ株にも見られるもの)を同定し、2021年2月に学術誌「ネイチャー」に発表した。6カ月間感染していた、南アフリカのHIV進行期の患者からは、ウイルスが体の免疫防御を逃れるのを助ける多数の変異が見つかり、2022年になって「Cell Host & Microbe」に報告された。

「ウイルスがその進化の歴史の中でこれほどすばやく生態を変化させていることは、大きな発見です」とグプタ氏は言う。インフルエンザやノロなどのほかのウイルスもまた、免疫系がそこなわれた人の体内で変異を起こすが、それは「極めてまれ」な事例であり、「狭い範囲の細胞にしか」感染しないという。

 これとは対照的に、新型コロナウイルスは体のさまざまな部分に感染できることが証明されており、科学者たちがさらに頭をひねる不可解な謎を生み出している。