DCS2022/08/29 05:55
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「小が大を呑み込む」買収劇!
アークランドサカモトの設立は1952年、金物卸を扱う「坂本商会」として創業した。ホームセンター・DIY事業に進出したのは1978年で、2022年時点において同社が運営する「ホームセンタームサシ」は新潟県を中心に富山・石川などの日本海側エリア、近畿圏で38店舗を運営する。ホームセンタームサシの売上高は700億円前後となっている。

このほかアークランドサカモトは、外食チェーン運営のアークランドサービスホールディングス(東京都/坂本守孝社長)を傘下に抱える。「ホームセンタームサシ」の名を聞いたことがなくても、カツ丼専門チェーン「かつや」は知っているという読者も多いだろう。

一方、住宅設備を主力事業とするLIXILグループ(東京都)傘下だったビバホーム(当時の社名はLIXILビバ)。買収前の2020年3月期の売上高は1885億円弱、本部を置く埼玉県を中心に、北は北海道、南は九州・佐賀まで22都道府県に100店舗超を展開していた。

ホームセンター事業の店舗数、売上高を比較すると、ビバホームはアークランドサカモトの3倍近い規模であり、アークランドサカモトのビバホーム買収はまさに「小が大を呑み込む」買収劇だった。

巨大買収劇のゆくえは……
当然、ビバホーム買収の道のりは平坦なものではなかった。売上高1兆円を超えるグローバル企業、LIXILグループがビバホームの売却を決めたのは2020年のことだ。当時のLIXILグループは、創業家一族による現役社長(瀬戸欣哉氏)の解任劇、ファンドの支援を受けた瀬戸氏の返り咲き……と経営体制が揺れた時期だ。「創業家との関係が深いビバを現経営陣が切り捨てたのでは」と揶揄する声も一部ではあったものの、「利益率の低いホームセンター事業の分離」「本業への回帰」が公式な売却理由である

LIXILビバの買収コンペには、複数のファンドも名乗りを上げた。買収必要資金は1000億円にのぼるとも報じられ、アークランドサカモトは資金面で劣るとされたものの、短期借入枠およびシンジケートローン(みずほ銀行・三井住友銀行)により資金を調達し、結果的に買収劇を制している。

なお、この調達に伴い、アークランドサカモトの自己資本比率は69.7%(2020年2月期実績)から23.0%(21年2月期実績)に低下、財務状態は急速に悪化した(22年2月期実績は26%)。

ビバホームの子会社化に伴い、渡邊修前社長を筆頭とする旧経営陣の多くがビバホームを去り、代わりにアークランドサカモトの幹部が取締役に就任している。こうしてアークランドサカモトの傘下に入ったビバホームだが、話は子会社化で終わらなかった。

“ムサシ流”が徹底されるビバホーム
ビバホームの買収により売上規模が3倍超となったアークランドサカモトは、M&Aの成果をあげるべく、改革に着手する。まず手をつけたのは、“ムサシ流”の徹底だ。取り扱い商品では、ムサシが強みとする自転車や農業資材の品揃えを強化、総合ペットショップ「ニコペット」のビバホーム店舗への展開も加速していく。

現場オペレーションも、ムサシがこれまで取り組んできた棚の高さの厳格化、園芸コーナーでの庭造りなどが励行される。また、ムサシはコスト管理にも厳しいと言われており、ビバホームに対して徹底した在庫管理を要求するといった話も聞こえてくる。

こうした取り組みを浸透させるのは簡単ではない。ビバホームの従業員との対話を繰り返すなど地道な取り組みが必須であるのは間違いない。

では、なぜアークランドサカモトは100%子会社のビバホームを吸収合併したのだろうか。

他業態に目を向けると、ツルハホールディングス傘下の「くすりの福太郎」「ドラッグイレブン」、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス傘下の「ユニー」「長崎屋」は、買収後もそのまま子会社が残されている。

子会社が存続するケースでは、店舗の屋号もそのままである場合が多い。「ダイエー」がイオンの子会社としていられるのも、いまだ高い知名度を誇るダイエーブランドを残すためとも言われている。

今回の吸収合併でも「ビバホーム」屋号はそのまま継続するということだが、今後の帰趨は注目されて然るべきだ。オペレーションや品揃え、店づくりが“ムサシ流”に変わるにも関わらず現状ビバホームの看板を残す意味は、「ビバホーム」の高い知名度にあるのだろう。

今後もM&Aが加速?
吸収合併の理由として考えられるのは、経営効率の向上だ。もちろん、子会社が少なければいいというわけではないが、組織構造がシンプルであれば、経営の意思決定も迅速化する。とくに今後もM&Aを考えているのであれば経営効率の向上は欠かせない。

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