https://news.yahoo.co.jp/articles/801b8630f9b2ffd84abcc71ee0de23f5d7dae28d

 安倍晋三元首相の国葬をめぐって、岸田文雄首相は国会の閉会中審査で説明する意向を示しました。首相が閉会中審査に出席するのは異例です。

 ◇内心の自由と弔意

 一番の問題は弔意の強制への懸念です。首相は8月31日の記者会見で、「国民に弔意を強制するものではない」と強調しました。国民に対して弔意の表明を求める決定も見送りました。しかし、国葬当日は各府省庁で弔旗を掲揚し、葬儀中の一定時刻に黙とうします。こう聞くと釈然としない人もいるでしょう。

 安倍氏の死に弔意を示すことも、示さないことも自由なはずです。今回の国葬では世論が二分されていますが、反対が多いか、少ないかという問題ではありません。内心の自由が関わっているからです。

 安倍氏とも親しかった自民党のベテラン衆院議員は国葬の実施自体には賛成としつつ、「本当の保守は多様性を認める。一律に弔意を強制することは多様性を失わせる」と言います。

 ◇国会審議抜きで決めた

 国葬に関する規定を明記した法律はありません。国葬と決めたのは閣議でした。葬儀費用は国が全額負担します。それを国会審議抜きで決めたことになります。

 首相が閉会中審査に出席するのも、国会審議や議決を経るべきではなかったか、あるいは国葬に関する法律が必要だという批判が念頭にあるためです。

 誰ならば国葬とするかという基準もありません。首相は記者会見で、「総合的に時の政府が責任をもって判断をする」としか答えることができませんでした。

 記者会見で首相が安倍氏を国葬にする理由の最初に挙げたのは、「民主主義の根幹たる国政選挙を6回にわたり勝ち抜き」ということでした。しかし、6回にわたり勝ち抜いたのはもちろん、「首相」ではありません。安倍氏は公明党代表(山口那津男氏)とともに、一党首(自民党総裁)として選挙を戦ったにすぎません。

 安倍氏は通算でも連続でも、憲政史上最長の首相在任期間でした。問題になっている世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関わりだけではなく、プラスの面もマイナスの面もあるのは当然です。

 さまざまな評価がありうる政治家の国葬自体が望ましくないという考え方もできます。(政治プレミア編集部)